今回の措置を発表した9月24日の記者会見で、イオンの岡田元也社長は「今後のeコマース市場の成長と小売業の関係を考えると、ブランドが今のようにバラバラに分かれているのは徹底的な不利になる。イオンとしてブランドを整理する時期に来ている」と説明。業態転換によるダイエー再建方針を明らかにした。
具体的には、ダイエーの商圏を同社既存店の90%が立地している首都圏と京阪神に限定。強みである食品を生かし、総合スーパーから食品スーパーへの業態転換を図る。首都圏と京阪神以外の既存店やダイエー子会社は再編する。例えば北海道で展開しているダイエーグループはイオン北海道とマックスバリュ北海道に統合し、九州のそれはイオン九州とマックスバリュ九州に再編する。
●大胆な改革か、茨の道か
イオンのこの新しい再建方針について、株式市場関係者は概ね好意的だ。例えば大手証券関係者は「いつかはしなければならなかったイオンの決断。完全子会社化は以前も米ウォルマートが西友に実施して成功しており、不採算店を一掃するなどの大胆な改革に適している」と話す。
一方、ダイエーの内情に詳しい業界関係者は「これでイオンは茨の道に入った」と心配する。業績低迷から抜け出せないのはイオンも同様だからだ。イオンの14年度第1四半期連結決算では、総合スーパー事業は38億円の赤字、食品スーパー事業は23億円の赤字だった。総合スーパー事業は衣食住を取り揃え、消費者にワンストップショッピングの場を提供するのが強みだが、近年は客を衣料品はファーストリテイリングなどの専門店チェーンに、住宅関連はニトリなどの専門店チェーンに奪われている。さらに食品でも総菜メニューを充実させたコンビニに、米・酒・菓子類など生鮮3品以外の重量やかさのある食品はネット通販に客を奪われている。
この構図はライバルのセブン&アイ・ホールディングスのスーパー事業も変わらない。同社はコンビニ事業依存から抜け出せないでもがいている。スーパー業界全体が明るい未来を描けない状況に陥っているのだ。そんな状況下でのダイエー完全子会社化だが、「業態転換で本当にダイエーを再建できるのか」(業界関係者)と疑問の声も多い。
それだけではない。完全子会社化により、ダイエーの営業赤字はすべてイオンの連結決算に跳ね返ってくる。ダイエーの赤字を止血できなければ、業績への負荷は飛躍的に高まる。 業界関係者は「ダイエーが従来にも増して重い荷物になるか、イオン都市戦略の強力兵器になるかは、岡田社長が大胆なスーパー事業改革の道筋を示せるかどうかにかかっている。それは、今春打ち上げた首都圏スーパー連合構想の成否とも直結している」と指摘する。
いずれにしても、ダイエーの名は消えても消えないのがイオンの憂鬱だ。
(文=福井晋/フリーライター)