10月1日に外国人訪日客の消費税免税対象商品が拡大した。免税される商品は、これまで1万円を超えるバッグや衣料品、家電製品などに限られていたが、10月からは食料品や医薬品、化粧品にも拡大された。制度改正により、1人1日1店当たり5000円~50万円の範囲で免税が適用されるため、地酒や地方の土産物など新たな消費につながると期待されている。現在、国内で免税サービスの許可を受けている店は600~700店舗。
都市部の百貨店では、開始1週間で免税品の売り上げが3~5倍になった店舗もある。中国の国慶節の大型連休も追い風になった。銀座三越は、10月1~7日の免税対象品の売上高が前年同期比で2.6倍に急伸。食料品や飲料品、化粧品などが免税品に追加され、中国や台湾からの観光客がまとめ買いをした。
関西の百貨店も訪日客で潤った。あべのハルカス近鉄本店(大阪)は10月7日までの免税対象品の売上高が同5.5倍に膨らんだ。大丸京都店(京都)では閉店時間の午後8時になっても数十人が免税カウンターに並ぶ日もあり、売上高は同4.5倍という。他方、地方の百貨店には目立った効果は表れていない。
●ドンキ、「ようこそ!カード」で訪日客取り込みに成功
昨年1000万人を超えた外国人訪日客の2人に1人が来店するといわれているディスカウントストア、ドン・キホーテは、10月の制度変更に合わせて訪日客の多い東京や大阪などの25店舗を「TAX FREE SHOP」として展開。そのまま免税申告書に貼ることができるレシートを渡せるようレジを刷新した。
ドン・キホーテが訪日客の観光スポットになった背景には、隠れた企業努力がある。2008年、訪日客の取り込みを目指して「インバウンド(訪日客)プロジェクト」を立ち上げた。世界の約700店の旅行代理店と提携して開発した外国人集客用ポイントカード、「ようこそ!カード」を集客の目玉にし、このカードを見せれば免税品1万円以上の購入で500円の割引を受けられるようにした。このカードは国内の旅行会社や主要ホテルに配布されており、裏面のバーコードにより、どの旅行会社にいつ配布したものか、どのホテルがどの国籍の人に配ったものかがわかる。旅行会社やホテルには、ドン・キホーテでの購入額に応じてバックマージンが入る。日中は、名所旧跡やテーマパークなどを訪れて日本の観光を満喫するが、深夜に外国人が安心してショッピングを楽しめる場所がない。そこに目をつけたドン・キホーテは、旅行会社やホテルを取り込んで集客に成功した。
訪日客がドン・キホーテを訪れる時間帯は、夕食後の午後10時から午前1時までの3時間に集中している。日本の土産の代表であるブランド品や化粧品が安く手に入るため、銀座本館は外国人があふれ返っている。運営会社ドンキホーテホールディングスの14年6月期の連結売上高は前期比8%増の6124億円、営業利益は6%増の342億円。このうち免税品の売り上げは3%程度だった。これを東京五輪が開催される20年には10%程度にまで引き上げる。菓子や化粧品、医薬品など外国人観光客に人気の商品が大きく伸びると読んでいる。