かつての中小企業は今や、従業員8300人、資本金467億円の大企業に変身した。筆頭株主は日亜持株組合(保有比率14.0%)で、以下、協同医薬研究所(6.1%)、徳島銀行(4.9%)、阿波銀行(4.8%)、四国銀行(4.8%)、シチズンホールディングス(3.7%)、みずほ銀行(3.5%)、伊予銀行(3.1%)、三菱東京UFJ銀行(2.9%)、ソニー(2.6%)が名を連ねている(14年6月末現在)。
13年12月期の連結売上高は前期比7%増の3096億円、本業の儲けを示す営業利益は64%増の500億円、当期純利益は51%増の493億円、売上高営業利益率は16%を誇る高収益企業だ。売り上げは20年間で20倍になった。稼ぎ頭であるアジア事業を含む海外売上高は全体の62%を占め、中でも中国が前年より1.8倍となり業績を押し上げた。今期も業績は好調で、14年中間期(1~6月)の連結売上高は前年同期比15%増の1603億円、営業利益は2.2倍増の373億円と大幅な増収増益だった。
高収益企業に大化けしたきっかけは、世界初の青色LED製品化に成功したことだった。その青色LED開発の中心人物である中村氏を結果として追い出したかたちとなった日亜化学は、中村氏のノーベル物理学賞受賞について次のようにコメントしており、中村氏に対する複雑な心情が読み取れる。
「日本人がノーベル賞を受賞し、受賞理由が中村氏を含む多くの日亜化学社員と企業努力によって実現した青色LEDであることは日亜化学としても誇らしい」
中村氏は自身が創業したLEDベンチャーSORAA(米カリフォルニア州フリーモント)で10月8日、記者会見を開き、SORAAが製造する紫色LEDの普及によって消費エネルギーを減らし、さまざまな社会問題を解決する意気込みを語った。中村氏が現在取り組んでいる紫色LEDは、青色LEDより少ないエネルギーで同じ明るさを実現可能で、大きな省エネ効果が期待できるという。SORAAの紫色LEDは展示会会場の照明などで使われ始めている。2~3年をメドに価格を大きく下げ、一般的な照明向けに一気に普及につなげる計画だという。
(文=編集部)