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小黒一正准教授の「半歩先を読む経済教室」(10月21日)

安倍政権「経済再生ケース」に暗雲?今年度GDP目標、毎四半期+1%は高いハードルか

文=小黒一正/法政大学経済学部准教授
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 では、14年度の残りの3四半期の実質GDP成長率が00年代と同じ値、つまり前期比で平均+0.35%であれば、14年度の実質GDP成長率は年率でどうなるか。14年度の実質GDP成長率は年率でマイナスとなり、0.75%減(=0.35%×3-1.8%)となる。

 もっとも、14年7-9月期の実質GDPは増税の反動減に対するリバウンドで大幅なプラス成長が予想され、今回は5.5兆円の補正予算もある。GDPの4-6月期2次速報では、公的資本形成の伸びがマイナスで、反動減対策として予算の前倒し執行を試みた割には十分進捗していなかったことが明らかになった。だが、それは工事の進捗に応じた出来高でみるGDP統計ではラグが生じるためであり、逆に経済対策の効果が7-9月期以降に表れることを意味する。

 このような影響を含め、14年度の実質GDP成長率が年率でプラスになるためには、上記と同様の計算で、14年度の残りの3四半期の実質GDP成長率が前期比で平均+0.6%以上である必要がある。

●トレンド成長率低下は「自然な姿」

 ところで、年率1.4%(四半期ベースで前期比+0.35%)というトレンド成長率は低すぎるという意見もあろう。だが、経常収支の黒字縮小や継続する貿易赤字から明らかなように、日本経済の構造変化により、異次元緩和で円安が進んでも国内生産能力の低下や世界経済の停滞から実質輸出が伸び悩む一方で、円安による輸入インフレが家計の実質所得を目減りさせている。むしろ低成長の原因は供給側の制約も大きい。高度成長期は、人口増や高貯蓄を背景とする労働人口や資本ストックの増加が成長の牽引となった。

 だが、急速な少子高齢化に伴う人口減や貯蓄率の低下により、労働力の減少や民間の純資本ストック(粗資本ストック-資本減耗)の伸び鈍化が顕在化しつつある。現状では、生産性が上昇しない限り、トレンド成長率が低下してしまうのは自然な姿である。年末の再増税判断を含め、正しい政策を推進するには、日本経済の実力を十分に認識した成長目標の設定が重要となる。
(文=小黒一正/法政大学経済学部准教授)

小黒一正/法政大学教授

小黒一正/法政大学教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。


京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。


1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。


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