企業はなぜ官僚化・硬直化する?どう診断?組織が社員に否定的発言を強制するメカニズム
●組織がネガティブな発言を誘発
その原因のひとつとしては、組織の過去の成功体験や先人の手掛けた方法を変えられないという点が挙げられます。ですから、これまでとは異なる意見や、現状を変えていくような意見に対して、反射的にネガティブな反応をしてしまうのです。先例や慣習が金科玉条のごとく、組織の中で幅を利かせているため、組織が人にネガティブ発言を促してしまうのです。
さらに、相手の発言に対して肯定ではなく否定から入る傾向には、組織階層による違いが見いだせます。新入社員は希望に燃えているのでポジティブな意見や突飛で新しい意見が多いが、その組織で10~20年と過ごした中間管理職になると、できない理由ばかりを探すようになってしまいます。一方、経営トップに抜擢された人は、困難を乗り越えてやり抜く道筋を見つけようとしてポジティブな意見を求めてくるのです。
この違いは一体、何によって生じるのでしょうか。
一人ひとりの社員をみると決して消極的でもなく、ネガティブでもなく、一生懸命に自分の職責を果たそうとしています。個々一人ひとりとしては、決して新しい意見を求めていないわけでもありません。
過去から現在まで成長してきた組織が、社員一人ひとりに対して、過去を肯定する思考や発言や行動を促し、その意味を深く考えない社員を増殖してしまうのです。その結果、現状を肯定し、変革を否定するネガティブな発言を組織が誘発しているのです。人がつくり上げてきた組織が、社員の思考や発言や行動を規制してしまっているのです。ここに問題があります。
第三者からみて官僚化・硬直化した組織では、社員が、実は自分の発言や行動に問題があることに気付いているにもかかわらず、その発言や行動を行ってしまう傾向が強いのです。中間管理職で多くみられるのは、深く考えずに惰性や慣性に従って仕事をしてしまうケースです。中間管理職になると、新しい事業や斬新な方法への着手を表明すると、部下や上司、他部署をはじめ多くの社員を説得しなければならなくなります。そこに多大な労力が発生するため、労力を回避して惰性や慣性に流されてしまうのです。
社員が皆同じ意見を示す日本企業に数多く遭遇してきましたが、それぞれの社員が違った意見を持ち、様々な発言をすることが望ましく、そういう組織のほうが明らかに活力にあふれています。さらに日本企業には、自分の発言は絶対的に正しく、一度発言したことを決して訂正してはいけないという風潮があります。「経営者は朝令暮改でもよい」といわれていますが、社員にも「相手に説得されてもよい」「相手の発言に乗ってしまってもよい」という度量が必要なのです。