この現象を受け、健康志向が新たな局面に入ったとみる向きもあるようだ。
消費者の健康志向の高まりは昨今に始まったわけでなく、例えば健康食品の専門紙「健康産業流通新聞」(健康産業流通新聞社)が1975年に創刊されていることからもわかるように、連綿と続いている現象なのだ。
ビール市場が前年比2%減で推移している中で、発泡酒を製造する大手5社で構成する協議会の「発泡酒の税制を考える会」が発表した今年1~9月の発泡酒課税出荷量は、12年ぶりに前年比プラスとなった。
これは飲料メーカー各社が続々と発売したプリン体ゼロ、糖質ゼロの「ゼロ・ゼロ系」をはじめとする「機能性発泡酒」がけん引したのだ。市場調査機関インテージの調査でも、今年7~9月の機能性発泡酒の市場規模は前年比25%増を記録した。
機能性発泡酒のメインターゲットは各社とも40~60代の男性だったが、インテージの調査では、7~9月期に30代男性の購入率が前年比85%増、女性全体で70%増と急増している。機能性発泡酒は、広い年齢層にヒットしたのだ。これは、有効供給が需要を開拓するという典型的な現象だが、当のメーカーはどう受け止めているのだろうか?
●あえて機能性を前面に出さない意図
キリンビール・マーケティング部商品担当主務・福島健氏は、次のように説明する。
「最初はトライアルで購入していただくことが多いのですが、それがリピートにつながっています。PR効果もあったと思いますし、サッポロビールの『極ZERO』に先行された悔しさから、営業担当者も商談にも熱が入ったようです。流通関係では、従来お取引のなかった企業にも取り扱っていただけるようになりました」
例えば、発売2~3週間後に、機能性発泡酒をあまり置かない大手コンビニエンスストアからも取り扱いたいとの依頼が入るなど、異例の動きが発生したほどだった。
「2年前までは価格志向が顕著でしたが、その後は機能性に注目が集まるようになりました」と語りつつも、淡麗プラチナダブルの開発の本義は、あくまで味の向上であると福島氏は力説する。