話題のユーシン社長公募、なぜ失敗?同社の誤解から、企業が採用で犯す過ちを考察
●注目を集めたユーシンの社長選び
ブログ機能の一つに「最近の人気記事」をいくつか表示するというものがある。筆者のブログでは、ここ数年来必ず上位に表示されている「定番人気記事」が、『ユーシン 社長公募その後(2) 結局、、』という記事だ。2012年5月に掲載した記事なのに、いまだに読まれ続けている。それどころか、1500以上ある過去の全記事の中で累積アクセス数が1位、それも2位を2倍以上離しての断トツ人気である。
ユーシン社は10~11年にかけ、上場会社として珍しく社長を公募した。1722人もの応募があり、外務官僚のY氏(当時49才)が採用され、社長代行として就任した。
ところが11年8月の臨時株主総会で同社は、社長昇格人事の先送りと田邊耕二現社長(同77才)の会長兼務を決定した。筆者は同年8月19日付ブログ記事http://yamadaosamu.blogspot.jp/2011/08/blog-post_19.htmlで、次のように書いていた。
「つまるところ、オーナー経営者である田邊氏が禅譲したくないのだ。(略)今回もY氏は結局は社長就任に至らないか、短期日でその職を追われることになるだろう。49才?まだ若いのにお気の毒なことに」
今回、ユーシンの次期社長選びを取り上げたのには2つの理由がある。
1つ目の理由は、本連載タイトルを『和根洋栽:日本の会社に外資のトップ』としたこと。Y氏は“外”資出身ではないが“外”務省出身なので、ということだ。日系企業との組織文化の違いの幅が、外資系より上級官僚のほうがより大きいため、興味深い事例だと考えられたからだ。
2つ目の理由は、同社は今年に入り、また社長公募を発表して話題を集めたからだ。2月16日に「社長候補求む!」という広告を全国紙に打ったが、この2度目の募集について、田邊氏は次のようにインタビューで語っている。