●道場六三郎氏監修の豪華な食事がシニア層に好評
しかし、この事態にカラオケ業界も、ただ手をこまねいて見ているわけではない。大手カラオケチェーン店「レストランカラオケ・シダックス」は、カラオケを若者以外の年代にもより親しんでもらうべく、料理人・道場六三郎氏監修のもと、2時間のルーム料金に松花堂弁当風の料理8品、ワンドリンクがついたプラン「雅御膳(みやびごぜん)」(1人2000円<税込>一部店舗未実施)を4月より期間限定で展開している。
このようなキャンペーンを行った背景をシダックス広報室は次のように説明する。
「2010年4月より、お食事、ワンドリンク、ワンデザートつきの『個室で満喫 ゆったりランチ』(1人1時間620円)を実施しているのですが、ランチをご愛用いただいていたご高齢のお客様より、『少し高くても、よりおいしいものをゆっくり食べたい』というワンランク上の食空間を求める声がございました。そこで、そのようなニーズにお応えするために、第1弾として『雅御膳』を13年11月より提供を始めたところ、好評だったため、和の巨匠・道場六三郎氏監修で料理をリニューアルし、実施にいたりました。こちらもシニア層の方々から『盛り付けも目に鮮やかで、味も非常においしい』『脂っこくなくてうれしい』『町内の集まりや、ちょっとしたお友達同士の集まり、食事会にも使えるため重宝している』などの声が聞かれます。シニアのお客様の中には1人でお見えになり、ランチがてら歌の練習をされている方もいるほどです」
そのかいあって、シニア層の利用者にも変化が訪れているという。
「08年度、8.8%だった60歳以上のお客様の割合は、13年度は15.9%と大きく伸びました。さらに9月8日より、60歳以上の会員は、毎週月曜日はルーム料金2時間無料(1オーダー制)となる『ゴールデンエイジデー』というサービスを全店で開始しています。検証のため7月よりこちらのサービスを25店舗で先行実施したところ、実施店舗では60歳以上の客数が前年比132.9%、売り上げも132.2%と大きく伸びました」(同)
●カラオケでギター演奏、オリジナル楽曲配信
さらに、シニア以外の客層も取り込もうと、カラオケ機種でもさまざまな取り組みが行われている。12年5月発表の「JOYSOUND」シリーズ最新機種「JOYSOUND f1」には、ギターコードが表示され、演奏を楽しむことができるサービス「ギタナビ」(対応曲数は1万3000曲以上)が搭載されている。
この試みについて、業務用通信カラオケを運用するエクシング広報担当は、こう説明する。
「09年10月に発表した業務用通信カラオケシステムの新モデル『CROSSO』より、カラオケをしている様子を撮影して、その動画をウェブサイトで公開できる『うたスキ動画』システムを標準装備させたところ、自分の歌唱動画をネット上で友人と共有するという楽しみ方が一気に広まりました。その中で、ギターなどの楽器を持ち込んで演奏している方の動画も増えていました。そこで、元々スマートフォン向けのアプリなど、ギター練習ツールとして展開していた『ギタナビ』を『JOYSOUND f1』に搭載してみたのです」
楽器の演奏というと敷居が高いように感じるが、利用者の反応はどうなのだろうか?
「学生時代にギターなどの楽器演奏に親しんだ方や、現在バンド活動をされている方、楽器演奏はするけれど歌はちょっと苦手という方も、一緒に楽しめる空間をつくるという狙いで始めたのですが、実際に利用数は増えており、投稿される動画にも楽器演奏をされているお客様が増えてきています」(同)
「JOYSOUND f1」には、ほかにも自身のオリジナル楽曲音源などを持ち込んだ場合に、自分でカラオケデータを制作して、全国配信を行い、お店で実際にカラオケとして歌えるサービスも展開されている。
お年寄りもバンドマンも幅広く顧客として取り込むことで、活路を見いだそうとしているカラオケ業界。歌えて、食事も楽しめて、楽器も演奏できる……決して広くはない空間で、今後も新たな楽しみ方ができるようになるのだろうか。カラオケボックスの今後の可能性に期待したい。
(文=武松佑季/A4studio)