15年3月期通期の業績見通しについて、JALは最終利益を前回予想から200億円増の1350億円に上方修正したが、ANA HDは10月に発生した台風による欠航の影響なども考慮し、最終利益350億円とした前回予想を据え置いた。
羽田戦略が順調に進んでいるといわれるANA HDだが、死角はないのだろうか。
●ANAの拡大路線
ANA HD傘下のANAビジネスソリューションは昨年10月1日、ANAの現役客室乗務員(CA)が講師を務める「ANAエアラインスクール」を東京・築地に開設した。航空会社がCA養成の学校を開設するのは世界で初めてだという。
さらにANA HDは、タイの航空会社などと共同で海外で初めてパイロット養成専門学校を設立し、今秋開校した。相次ぐ格安航空会社の参入でアジアでもパイロットが不足しているが、十分な訓練施設がなく養成が間に合わないためだ。同校では、1台10億円以上する専用のフライトシミュレーターを現在の1台から来年末には4台に増やし、最大で200人の訓練生を受け入れるとしている。
一昨年より日本でもLCC(格安航空会社)の就航が相次いでいるが、ANA HDは3社のLCCを傘下に抱えている。ピーチは大阪拠点、バニラエアは東京拠点、そして、スターフライヤーは福岡が拠点だ。航空業界関係者は語る。
「今夏、政府は政府専用機の整備委託先を、これまでのJALからANA HDに変更しました。JALは1度倒産した企業ですし、羽田発着枠の配分を見ても、現在の“ナショナルフラッグキャリア”はANA HDだといえます。最近の事業拡大の裏には、そうした自信もあるのかもしれません。ただ、JALもかつては事業拡大に走り、結果としてそれが経営危機につながった過去もあるので、ANA HDの拡大路線は慎重に見る必要があるでしょう」