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鈴木領一(すずりょう)のビジネスの超ヒント!第4回

自己啓発難民を量産する「思えば叶う」の欺瞞 嘘まみれの成功者達の物語、ノウハウの毒

文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネス・プロデューサー
自己啓発難民を量産する「思えば叶う」の欺瞞 嘘まみれの成功者達の物語、ノウハウの毒の画像1「Thinkstock」より

「10年間セミナーや教材で勉強してきて、夢を心に描いてきましたが、まだ何も実現しません。自分にふさわしい夢が何かもわかりません。どうすればいいですか?」

 先日、こんな相談を受けた。筆者はコンサルティング業の傍ら、ビジネスコーチングも行っているが、最近特にこのような相談が増えている。

 いわゆる自己啓発セミナーに多額の費用を注ぎ込んできたにもかかわらず、夢が実現せず、何をすればいいかわからないという。筆者はこのような人たちを「自己啓発難民」と呼んでいるが、なぜこのような人たちが増えてきているのだろうか。

 現在普及している自己啓発の典型的なノウハウは、「夢を心に描けば現実になる」というものである。これはアメリカから輸入されてきた、いわゆる成功哲学をベースにしている。成功哲学の源流をたどれば、キリスト教の宗派の一つ「ニューソート」に行き着く。日本でも人気がある英国人牧師のジョセフ・マーフィーもこれに属する一人だ。ニューソートの流れの中には、成功哲学の提唱者であるナポレオン・ヒルもいる。

 彼らの主張は「心に描くことは必ず実現する」というもので、そのためにはポジティブシンキングでいるべきだ、と主張する。このような考えの背景にはキリスト教的教義があると思われる。人には理想的な状態があり、そこへ向かうことが善であり、それは祈り願うことで実現できる、という考え方だ。

●心に描くだけでは実現しない

 しかし、現実には、このようなシンプルな考えで夢を実現することは困難だ。自分の心の中で考えた通りの未来が訪れる、というのは「マインド万能論」ともいうべき考えである。現実世界では、想定外の出来事が頻繁に起こり、その都度対応を変えていかなければ前進することすら叶わない。

 だが、「思えば叶う」というノウハウには根強いファンが多い。筆者も全否定する立場ではないが、しかし「マインド万能論」的な行き過ぎた考えには賛同できない。なぜ、「マインド万能論」を多くの人が信じているのだろうか。そこには、成功者自身が陥る「後知恵バイアス」と「ドミナントストーリー」(結論から組み立てられるストーリー)に原因があるのだ。

 筆者は多くの成功者に取材をしている。その数は20年間で1000名を超えているが、彼らの語るストーリーには一つの特徴があることに気づいた。それが後知恵バイアスである。後知恵バイアスとは、起こった出来事を都合良く解釈することをいう。例えば、宝くじに当たった人が、「近所の神社にお参りしていたから当たったのだ」などと考えることが、その典型である。神社のお参りと宝くじにはなんら関係はないが、宝くじに当たったことで脳は因果関係を探し始め、神社のお参りが良かったのだと勝手に解釈してしまうのだ。

鈴木領一/コンサルタント

鈴木領一/コンサルタント

 思考力研究所所長。行政機関や上場企業の事業アドバイスをはじめ目標達成のためのコーチングも行っている。プレジデント誌などビジネスメディアへの記事寄稿多数。また100の結果を引き寄せる1%アクション(サイゾー刊)は、氏のコーチングメソッドを初公開した書籍で、主婦から経営者まで幅広い層に支持されロングセラーとなっている。また、出版プロデュースの活動も行い、代表作には小保方晴子氏の『あの日』(講談社刊)がある。

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