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鈴木領一(すずりょう)のビジネスの超ヒント!第4回

自己啓発難民を量産する「思えば叶う」の欺瞞 嘘まみれの成功者達の物語、ノウハウの毒

文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネス・プロデューサー

●「好き」をエネルギーにして行動

 11月4日付当サイト記事『食べログ、圧倒的強さの秘密?やらせ騒動を、管理体制徹底やレビュアーとのオフ会で克服』にて述べたが、先日飲食店検索サイト「食べログ」を立ち上げたカカクコム取締役の村上敦浩氏を取材した。村上氏はITの素人にもかかわらず、たった一人で「食べログ」事業を立ち上げ、日本一のグルメサイトに成長させた人物だ。村上氏は成功者には珍しく、自身のサクセスストーリーを飾らずに素直に表現される人物だった。村上氏の原動力も「好き」のエネルギーだ。

「食べログ」を立ち上げた直後からサイトアタックによる閉鎖や、やらせ口コミ問題などの逆境に見舞われるが、あきらめることなく行動し続けた。筆者が「なぜこの事業を始めたのか」と質問すると、村上氏は「好きだから」と即答された。食べることが好きで、おいしいお店を探すのが好きだという。

 だから、どんな逆境でもあきらめずに、行動し続けることができたのである。

 村上氏のように素直に表現される人はまれである。成功者の中には自分のサクセスストーリーを美しく見せようとするあまり、成功することが最初から見えていたかのようなドミナントストーリーを語る人も多いのだ。

 ほとんどの成功者は、最初は「どうなるかわからない」という状況からスタートしている。行動しては考え、行動しては考えの積み重ねから最善の選択を繰り返していくうちに、自分の行く先が見えてきた、というのが現実のはずである。夢が最初から見えていたのではなく、行動し続けているうちに夢を発見したのだ。自己啓発ノウハウで語られる「最初に夢ありき」的な方法論ではないのだ。因果が逆である。

 どんな逆境でも飽きることなく行動し続けるにはパワーが必要であり、その根底には「好き」というエネルギーがなくてはならない。

 では「好き」とは何か。筆者は、「心がなぜそれに惹かれるのか説明できないもの」と定義する。例えば、あなたが異性を好きになったとしよう。なぜその人を好きになったのかを問い続けると、「好きになったから好き」という説明のしようがないところに行き着く。

 筆者の長男は幼い頃から電車が好きなのだが、「なぜ好きなの?」といつ質問しても、「好きだから」としか答えようがない。気がついたら熱中していて、気がついたら写真を撮りに行ったりしている。好きだからこそ、考える前に行動することができるのだ。まるで異性を好きになったかのように。「好き」とは、DNAに刻み込まれた各自固有の好みとしかいいようがない。

●好きと思い込んでいるだけのことも

 逆に、「なぜそれが好きなのか?」という問いにスラスラと答えることができるならば、それは本当の「好き」ではない可能性がある。

 拙著『100の結果を引き寄せる1%アクション』(サイゾー)で取り上げた「フェラーリに乗ることを夢見ていた青年」の話がある。この青年は、成功したらフェラーリに乗りたいという夢を持っていた。しかし、毎日のようにフェラーリの写真を見て「俺はフェラーリに乗っている」というアファーメーション(自己暗示)を繰り返しても何も実現せず、ストレスが溜まる一方だった。

鈴木領一/コンサルタント

鈴木領一/コンサルタント

 思考力研究所所長。行政機関や上場企業の事業アドバイスをはじめ目標達成のためのコーチングも行っている。プレジデント誌などビジネスメディアへの記事寄稿多数。また100の結果を引き寄せる1%アクション(サイゾー刊)は、氏のコーチングメソッドを初公開した書籍で、主婦から経営者まで幅広い層に支持されロングセラーとなっている。また、出版プロデュースの活動も行い、代表作には小保方晴子氏の『あの日』(講談社刊)がある。

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