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日本郵政上場、主幹事証券11社選定の異常 広がる販売苦戦予想と成長性への疑問

文=和島英樹/日経ラジオ記者
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日本郵政上場、主幹事証券11社選定の異常 広がる販売苦戦予想と成長性への疑問の画像1日本郵政本社が所在する日本郵政ビル(「Wikipedia」より/Ons)
 日本郵政株式の上場に向けた準備が進んでいるが、市場ではその行方に関して早くも強弱感が対立している。久々の大型民営化IPO(株式新規公開)で新規投資家の目を市場に向けさせることに期待する向きがある半面で、成長性などを疑問視する市場関係者も少なくない。

 小泉純一郎政権下で自民党が郵政民営化を掲げた選挙で圧勝したことを契機に、日本郵政の株式会社化が進められてきた。しかし、その後の民主党政権では改革が後退し、株式売却は凍結。現在では民営化推進となったが、上場に際して全国の郵便局網を維持するユニバーサルサービスを維持することになっており、株式市場で求められる「効率経営」が困難となる。

 また、日本郵政傘下の郵貯銀行とかんぽ生命も、将来上場する可能性も否定できない。これは1987年にNTT株式が上場した時に似ている。当時売却が想定されていなかった子会社のNTTドコモがその後に上場。NTTの連結利益の約6割をドコモが稼いでおり、投資家はNTT株を保有するメリットが少なくなった。

 利益成長が描きにくければ、本来公開価格は安くなるはずだ。PER(株価収益率)などの投資指標にプレミアムが付与できないためだ。しかし、市場では「財政再建を唱える財務省が、幹事証券に価格面でのプレッシャーを与えている」との観測が浮上している。

●販売苦戦の予想も

 財務省は10月、日本郵政上場に関する主幹事選定手続きの結果を公表。グローバルコーディネーターとして野村証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、ゴールドマン・サックス証券、JPモルガン証券の4社を選んだ。グローバルコーディネーターを含め、主幹事証券は11社の陣容となっている。本来、主幹事証券は副幹事以下の証券会社を束ねる役割を担うので、通常はせいぜい2社程度。「主幹事」が11社もあること自体が異常な状況ともいえる。

 政府保有株式の売却益は東日本大震災の復興予算の財源となる。一時は国内大手証券の1社が主幹事を辞退したようだ、とのうわさが走ったほどである。実際は幹事には大手がすべて揃ったが、IPOでの株式の販売苦戦を予想したためともいわれている。

 上場は15年秋が想定されている。政府が保有する簿価は約12兆4000億円で、87年のNTT株のIPOを上回るイベントとなる。

 国民の財産である株式市場。政府保有株の売却の成功が、郵政株式を購入した投資家にとって失敗にならないようにしなくてはならない。
(文=和島英樹/日経ラジオ記者)

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