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雑誌不況、地獄の季節へ ビジネス誌部数激減、「スクープ」から「身の回り」の時代に

文=長田貴仁/神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー、岡山商科大学教授
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●新女性ビジネス誌創刊

 このような変化の流れの中で、「新しい鉱脈」として実験台に載せられたのが「女性ビジネス誌」である。

 すでに、「エコノミスト」に続き「東洋経済」の編集長には、優秀な女性が就任している。両誌とも女性層獲得を前面に打ち出しているわけではないが、安倍晋三政権が力を入れている「女性の積極的活用」の流れに沿ったようにも見える。かつて、「プレジデント」が月刊末期の頃に女性編集長を登用し、「男性ビジネスマン(経営者)を読者対象にしている『プレジデント』の編集長に女性が」という点だけがクローズアップされ、一部メディアで話題を呼んだが、部数は低迷したまま。そこで立て直しのため、もう一人の編集長として男性の編集長経験者が加わり、二人編集長という過去にない体制が敷かれた。この歴史が証明しているように、女性が編集長になったからというだけで伸びるほど、ビジネス誌は甘い市場ではない。

 女性活用が叫ばれる一方で、「頭数合わせの女性活用」「男女逆差別」「すでに女性は活躍している。女性活用を叫ぶのは余計なおせっかい」、はたまた「脳科学的観点からいうと、男女同権は実現できても、男女同質はありえない」など、さまざまな意見が聞かれる。事はそれほど単純ではない。とはいえ、企業だけでなく、あらゆる組織において女性の人数、存在感が増してくることは事実である。

 この流れに沿うかのように11月7日、「日経ウーマン」の牙城に「プレジデント・ウーマン」(プレジデント社)が乗り込んできた。「プレジデント」の別冊として創刊されたが、数冊出して感触が良ければ定期刊化すると見られる。社内でも強い反対意見があったそうだが、「プレジデント」の女性部員たちが2年半前から構想しゴーのサインを得た。

 第一号の特集(カバーストーリー)は、『女の底力! 時間術のバイブル』。驚くべきことに、「プレジデント・ウーマン」創刊直前の10月29日に発売された「日経ウーマン」別冊の特集は、「仕事が速い女性がやっている時間のルール」。偶然かもしれないが、うり二つのタイトルである。競争し切磋琢磨するのはいいが、小さな市場を食い合ってどうするのだろうか。

「東洋経済」対「ダイヤモンド」、「週刊文春」対「週刊新潮」といった具合に雑誌は、それぞれのジャンルにライバル関係が存在した。現在もそうかもしれないが、あえて過去形で書いたのは、市場が成長期にあれば需要が拡大し、同じような商品でも売れる。しかし、市場が縮小している出版のような構造不況産業では、「女性ビジネス誌」という新市場を創造しようと思っても、下手をすればライバル同士が共倒れになりかねない。

 にもかかわらず、「日経ウーマン」と「プレジデント・ウーマン」は、どうして同じような発想をするのだろうか。ちなみに、どちらも編集長は女性である。女性が読者である→女性の目線で企画する→同じものが出来上がる、という単純なロジックが影響しているのかもしれない。また、いずれも大量のアンケートに基づき「顧客の声」を聞き、それを企画に反映している。この方法を用いれば、恐らくある程度は売れるだろう。しかし、それ以上のイノベーションは起こらない。

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