エコカー戦争、EVはFCVに絶対勝てない理由 利便性と燃料充填で圧倒的な差
プリウスに代表されるハイブリッド車の帰趨はどうなるのか。競合するのは前回連載で取り上げた燃料電池自動車(FCV)と電気自動車(EV)となる。これらの優位性について主としてエネルギー効率の観点から議論されがちだが、実は燃料の充填方式の違いが普及に大きな影響を与える。
決定的な違いは、FCVが専用の水素ステーションに行かなければならない一方、EVは電源設備があれば自宅でも充電できるという点だ。よって、一見するとEVのほうが利便性に勝るようにみえる。
しかし、EVに電源を接続するためには、専用の充電設備を設置しなければならない。家庭用100V電源で設置できる設備は「普通充電器」と呼ばれ、EVをゼロの状態からフル充電するまで7~8時間を要する。オーナーは毎日帰宅するごとにマイカーにプラグ接続し、朝まで置いておかなければならない。
加えて、EVは約15Aの電力を使用するという。家庭用配電盤は通常10A程度であり、最大に増やしても20Aである。所有者が夕方帰ってきてマイカーをプラグにつないだとたん、自宅の電気器具の使用が朝まで大幅に制限され、毎月の基本電力料が大幅に上がる。
EVの広汎な普及のために阻害となる要因は、まさにこの充電方式である。外部スタンドとなる充電ステーションが経済合理性を有するためには、対象であるEVのクリティカル・マス(市場成立のための最低必要量)が必要となる。
よって、普及していくにはまず大都市からとなるが、自家用車オーナーのどれだけが自宅に駐車場と専用充電器を設置するかがカギとなる。当然設置のためには外構工事が必要となるが、現行の充電設備費補助制度は個人住宅を想定していない。ちなみに補助条件の一つとして社団法人次世代自動車振興センターは「充電設備が公道に面した入口から誰もが自由に出入りできる場所にあること」としている。
●航続距離と燃料充填時間で大きな差
一方、FCVの場合、そのような家庭での面倒が起こらない。先日岩谷産業が発表したような水素ステーションに乗り付けて、水素ガスを充填すればいいだけのことだ。これは現在のガソリン補給と同じやり方なので、消費者が刷り込まれてきた消費行動と合致して抵抗感がない。せいぜい、プロパンガスを使っているタクシーが専用スタンドを覚えておくくらいの感覚になるだろう。