「日経ビジネス」(日経BP社/2014年11月17日号)が発表した「社長が選ぶベスト社長」の調査結果で永守重信日本電産会長兼社長が1位に輝いた。同社創業者の永守氏は、ゼロから始めた日本電産グループを年間売上高約1兆円の規模にまで育て上げた実績を持ち、多くの経営者がその手腕を高く評価している。では、昨年のワースト経営者は誰かというと、筆者は国内航空業界3位スカイマークの西久保愼一社長を選出したい。
昨年12月、欧州エアバス社が超大型機「A380」の売買契約をめぐり、英国の裁判所への訴訟準備を始めるとスカイマークに通知した。スカイマークが発注した6機のキャンセル料は最大7億ドル(840億円)に上る可能性があるという。これは15年3月期の同社の年間売上高予想880億円にほぼ匹敵する金額だ。
一方、スカイマークの同期業績も急速に悪化している。売上高こそ前期(860億円)からあまり変わっていないが、経常利益は前期の4億円の赤字から122億円の赤字へ悪化する見通しである。
加えて、ゴーイング・コンサーン(企業存続)の最大の指標となるキャッシュ・フローがとてもおぼつかない。12年3月末に306億円あったキャッシュが14年9月末には45億円まで減り、なお減少傾向が続いているという。同期間で毎月10億円近くのキャッシュが減少したので、この年末には同社の懐は「すっからかん」に近くなったと見るべきだろう。すでに設備や機器の売却を始めたとも報道されている。
西久保社長の即断即決
この不調の契機となったのが、前述のエアバスA380機の発注である。
「当初、エアバスはA320をスカイマークへ売り込んでいたが、社長の西久保がエアバスのカタログに掲載されていたA380に興味を持ち惚れ込んだことから発注につながったという」(「エアライン」<イカロス出版/14年10月号>記事より)
スカイマークの主要機材はボーイング737で、その座席数は177席である。A380は最大853席という巨大機だ。10年に同社は4機を発注したが、翌11年に西久保氏はパリの航空ショーで同機のデモフライトを見て、2機の追加発注を即断したという。6機で計1950億円、年間売上高の2倍を超える発注行為を役員会の事前承認もなしに決行してしまった。まことに短慮だったというべきであろう。もっとも、西久保氏は同社の最大株主でもあるので、同社のガバナンス的には役員会に諮っても同じことになったであろうが。
たとえどんな大企業であろうと、経営者がオーナー企業的に即断即決で意思決定していくこと自体は別に悪いことではない。ただし、「それがうまくいっていれば」ということだ。西久保氏の発注行為は今となっては同社を決定的に追い詰めてしまっている。経営者としては最悪手を打ってしまったとしかいいようがない。
キャッシュ・フロー的に窮状に陥った同社は、投資ファンドに数十億円規模の出資を求めていると報じられている。一方で、オペレーション的には日本航空に加えて全日空とも共同運行というかたちでの援助を求めている。しかし、共同運行は開始されるにしても早くて3月となる。投資ファンドのほうはその共同運行の成り行きを見て出資可否の判断決定を行うとみられている。
今後2~3カ月の間にスカイマークの命運が決まる。いずれにせよ、西久保氏はしかるべきかたちで経営責任を取るべきといえよう。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)