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ルディー和子「マーケティングの深層と真相」(2月16日)

アマゾン、無料配送はなくなるのか?小売業、アマゾンとの死闘で膨大なムダ排除&利益向上

文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学教授

 現在、ウォルマートの83の大型店舗スーパーセンターでは、ウォルマートサイトで注文された商品の5分の1を出荷しているそうだ。これに店舗に受け取りに来る客を含めると、ネット注文の半分は店舗受け取りか店舗出荷ということになるようだ。

 一元化された商品在庫データベースと最適化分析をしてくれるプログラムは、オンライン、店舗、コールセンター、カタログなど、あらゆるチャネルからの注文に対し、リアルタイム在庫、場所、注文状況を提供してくれる。在庫、物流コスト、人件費やサービスレベルなどを考慮して、どこから出荷すべきか決定してくれる。ウォルマートはこういったデータベース・プラットフォームを構築するのに4億3000万ドル(約510億円)投資したという。

 物流拠点としてのリアル店舗をネットワーク化することで、ネット専業のアマゾンに物流コストと配送速度で対抗しようというわけだ。しかし、このアマゾンとの競争において、リアルタイム在庫データベースの構築を進めている大規模小売業は、結果として小売業の3大ロス(損失)といわれる値引きによるロス、廃棄によるロス、そして販売機会ロスの減少を実現することになる。危機感がなければ、これほど厖大な努力や投資はできない。アマゾンの脅威が米国小売業のムダを排除し、利益の向上を生むといえる。

 オムニチャネルの本質は、店舗小売業が一元化されたリアルタイム在庫のデータベースを持つようになることにある。これは、小売業の利益を向上することに直接つながり、長年の小売業の悩みを解決してくれる。ネット専業と競争するなかで、店舗小売業の財務体質は頑強なものになっていくはずだ。

 考えてみれば、アマゾンが日本に進出した00年、書店は全国で2万3000店舗ほどあった。この書店と取次会社が協力して在庫のリアルタイム一元化を図り、朝注文したら当日の夕方には店舗で受け取れるというシステムを構築していたら、書店数が14年間で1万店近く減ることはなかっただろう。もっとも、タブレット端末も存在していなかった当時のIT環境では、無理だったと考えるのが妥当かもしれない。

●アマゾンの無料配送はいつまで続くか

 話は冒頭に戻るが、アマゾンは配送料無料サービスを、ずっと維持していくことができるのだろうか?

ルディー和子/マーケティング評論家

ルディー和子/マーケティング評論家

早稲田大学商学学術院客員教授。
国際基督教大学卒業後、結婚・渡米を経て帰国、
米化粧品会社のエスティ ローダー社で働きながら
上智大学国際部大学院経営経済修士課程修了。
エスティ ローダー社ではマーケティングマネジャー、
出版社タイム・インク/タイムライフブックス社での
ダイレクトマーケティング本部長を経て、
マーケティング・コンサルタントとして独立、
自身の会社ウィトン・アクトンを設立
ルディー和子オフィシャルブログ

Twitter:@shouhigaku

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