報道では、主に追徴課税の部分がニュースになったが、関係者によると、国税局が最も力を入れた税務調査は「グループ財団から敦子氏への間の不明朗な資金提供」だったという。そして、調査の結果、敦子氏の文化事業に財団の資金が流れていたことが判明したようだ。
2011年に84歳で逝去した健次郎氏は、1949年に日本建具工業を設立、その後、住宅用アルミサッシ業界に参入してトーヨーサッシを発足させた。その後、積極的なM&A戦略で総合住宅設備企業の住生活グループを作り上げた。
現在は、長男の潮田洋一郎氏がLIXILグループ会長として事業を継ぎ、長女の敦子氏は文化人として活動している。
健次郎氏が筆頭株主として保有していたLIXIL株について、洋一郎氏は自身が相続した分を分散してグループ企業群に買い取らせ、その代金で納税した。だが、敦子氏は自らが代表を務める資産管理会社に相続した株を移管し、その評価額を大幅に下げて税務申告した。この手法が国税局から問題視され、追徴課税を受けることになったのだ。
だが、国税局が本当に狙っていたのは、こういった単なる相続ではなく、それまでベールに包まれていたLIXILグループの財団の経理状況だった。関係者が明かす。
「敦子氏は東京・新宿御苑の裏手にある大名屋敷跡の自宅を開放してミニコンサートなどを開いているほか、渋谷の松涛にもアトリエを持っており、若手芸術家の個展を開いたりしています。フランス留学中にフランス人の音楽家兼俳優と結婚した敦子氏は、夫が経営していたレコード会社を買収し、その会社のレーベルのCDを日本に輸入販売するなど、一連の文化ビジネスに多額の費用を投じています。最近は、反原発コンサートにも資金援助をしていました。問題は、それらの資金がどこから出ていたかであり、国税局はその流れに目をつけたのです」
国税局の調査の結果、資金の多くは敦子氏が評議員を務めるLIXILグループの財団が「文化事業」の名目で拠出していたことが判明した。
「国税局にそれを指摘された敦子氏は更正処分に応じましたが、国税局はこれを機に財団にも調査に入りました。その結果、財団が計上していた『文化事業への支出』の多くが、実は敦子氏への個人的な資金援助だったようで、国税局はLIXILグループに厳しく是正を促しました」(同)
敦子氏の財布となっていた財団は、もともと健次郎氏が住宅に関する調査・研究を行うために設立したものだったとされる。敦子氏のパトロン活動はこれで終焉となりそうだが、関係者からは「芸術というのはそういうものであり、杓子定規に税金を徴収していたら、日本の芸術界は衰退する」と、国税局のやり方を批判する声も出ている。
(文=編集部)