そんな日本橋に活気を取り戻そうと立ち上がったのが、三井不動産だ。04年3月、閉店した東急日本橋店の跡地に、新しい商業施設「COREDO日本橋」を開発した。日本の中心(CORE)は江戸日本橋(EDO)だった、という思いを込めてネーミングした。これをきっかけに、官民地元が一体になって開発する日本橋再生計画が大きく動きだした。日本橋全体で街の活性化に取り組んだ結果、日本橋を新規に訪れる人が増えてきたという。
計画は、単に新しいビルを建てることにとどまらない。大型施設をつくることは、そのまま地域開発に直結する。地域開発で習得したノウハウを国際競争力の強化につなげる。米国でのビジネスはビルの取得が中心だったが、競争相手が多いことから、自社開発物件に活路を見いだす。日本橋再生計画で培われたノウハウが生きることになる。
三井不動産の15年3月期の売上高は前年同期比1.6%増の1兆5400億円、営業利益は6.0%増の1830億円と7年ぶりに過去最高を更新する見込みだ。三井不動産にとって、今回の米国プロジェクトへの参加は、海外で本格的に開発事業に携わる転換点となる。
●三菱地所は海外での不動産ファンド事業を本格化
一方、三井不動産のライバルである三菱地所は、米国でのビジネスの軸足を不動産ファンドに置く。昨年末、米不動産ファンド運営会社TAリアルティを買収した。買収額は非公開だが、400億円程度とされる。TAは米国35都市にあるオフィスビルや物流施設など約400の物件を対象とするファンドを運用。投資家から資金を募って物件を購入し、賃料収入を投資家と分け合う。運用資産残高は1兆3000億円(14年6月末時点)で、運用規模は全米のファンド運用会社の中で10位前後。TAの買収で、三菱地所の運用資産残高は3兆3000億円に達した。
三菱地所は10年から海外で不動産ファンド事業に乗り出している。英ヨーロッパキャピタルグループの発行済み株式の75%を10年に取得し、欧州市場に参入。13年には米子会社RGIが不動産ファンド事業を立ち上げた。TAの買収を機に、米国で不動産ファンド運用を本格化させる。三菱地所の15年3月期の売上高に当たる営業収益は前年同期比3%増の1兆1080億円だが、営業利益は7%減の1500億円の見込み。増収減益になり、三井不動産と差が広がった。不動産ファンド事業に力を入れ、安定した収益の確保を目指す。
米国不動産市場を舞台に日本の不動産業界のリーディングカンパニー2社は、三井不動産が開発事業、三菱地所が不動産ファンド事業で対決する。
(文=編集部)