また、帯につきものの著名人の推薦文については、出版社によって方針が異なるという。
「弊社では、帯に推薦文をあまり入れていません。推薦文を書いてもらうだけで謝礼が発生するのが慣例なので、編集者としてはやはり名の通った影響力の強い人物にお願いしたいというのが心情です。しかし、そういう人は多忙なため、断られるケースも多いです。あるいは、本の内容に共感できないためNGということもあるかもしれません」(同)
一方、著者としては自著の帯に推薦文を入れて、少しでもPRにつなげたいものだ。そのため、著者自ら推薦文を書いてくれる人物を探したり、知り合いの著名人に依頼するというケースも増えている。現在は出版不況といわれるものの、年間の新刊出版点数は増加しており、無名の著者が本を出す機会も増えている。著名人の威光にあやかりたい著者と、さらっと感想を書くだけでウン万円もらえる著名人をつなぐ「帯ビジネス」が存在しているのだ。
本の「帯買い」は存在する
本の販売現場で働く書店員にも話を聞いたところ、CDの「ジャケ買い」ならぬ本の「帯買い」が存在すると語る。
「映画化やドラマ化で帯が変更され、主演俳優の顔写真が大きく載るケースがあります。それがジャニーズ系の役者だったりすると、普段は本を読まなそうな女性が買っていくことは確かです。そういう意味では、売り上げ増につながる可能性があるので、書店としても、本の内容が映像化され、帯がリニューアルされる、という流れは好ましいものです」
書店にとっては、来店した客を「素通りさせない」ことが販売への第一歩となる。そのため、端的なキャッチコピーや著名人の感想など、読者目線の言葉が入っている帯は、本と読者との距離を縮め、書店で客の足を止める効果があるという。ただし、売り上げ増を帯だけに任せておくわけにもいかないので、書店としては「帯プラスアルファ」の努力をしているという。
「出版社がつくった帯を見て『制作者側の感覚で作られているな』と思ったときは、書店側で作ったPOPに読者目線の情報を入れるなど、お客さんがより手に取りやすくなる環境作りをしています。もちろん、そうした施策は書店としても『力を入れて売りたい』と思う本に関して行うので、すべての本にやるわけではありません」(前出の書店員)
文庫本の場合は、棚に入れる際に少しでも多く本が入るように、帯を外すこともあるという。60~70冊入る棚の場合、帯を外すと2~3冊は多く入るからだ。
普段、何気なく目にしている本の帯には、著者、編集者、書店員、推薦人などのさまざまな思惑がからんでいる。今度、本を買うときには、その小さな帯にも着目してみてはいかがだろうか?
(文=石徹白未亜/ライター)