躍進の原動力は、ホテル・レジャー事業だった。訪日外国人の増加がその背景にある。日本政府観光局の調査によると、観光業界の悲願といわれた「訪日外国人1000万人」を達成したのは2013年末(1036万人)。昨年末は前年比29.4%増の1341万人まで伸びた。少子高齢化などで国内旅行客の減少に悩む鉄道業界にとって、訪日外国人増加は特需のようなもの。そんな中、「訪日旅行銘柄として投資家の人気を集めているのが、東海道新幹線を擁するJR東海と西武HD」(大手証券関係者)だという。
直近の15年3月期第3四半期(14年4月-12月)連結決算では、ホテル・レジャー事業の営業利益が全体の20.9%を占め、その構成比は大手私鉄の中で群を抜いている。ちなみに同決算期の東急電鉄の同事業のそれは7.0%にすぎず、近畿日本鉄道でも14.8%にとどまっている。
西武HDの後藤高志社長は今年の年頭訓示で「当社は国が目標とする『観光立国』よりハードルが高い『観光大国』を目指し、そのトップランナーになる」と、社内に檄を飛ばした。多額の負債を隠蔽した有価証券報告書虚偽記載事件を引き金に、「ブランドが地に堕ちた」といわれたプリンスホテルを先頭にしたホテル・レジャー事業を、同社はいかにして立て直したのか。
後藤改革
メインバンクのみずほコーポレート銀行(現みずほフィナンシャルグループ)から西武鉄道(現西武HD)経営再建を託され、同行副頭取から西武鉄道のトップに転じた後藤社長がホテル・レジャー事業再建のために最初に行ったのは、事業縮小だった。全国に点在するホテル、スキー場、ゴルフ場の営業実態をすべて精査。当時167カ所あったこれら事業所のうち、赤字垂れ流し同然の事業所76カ所を05年2月からの2年間で売却・閉鎖し、事業規模を半数近い現在の91カ所へ一気に縮小した。
後藤社長は、この事業縮小と並行して組織改革も行った。それまで独自にリゾート開発を行っていたコクドをプリンスホテルに経営統合し、06年2月に持ち株会社の西武HDを設立。その下に西武鉄道とプリンスホテルを置き、両者が連携して経営改革できる体制に改めた。
しかし、これはあくまで本格的な経営改革に入るための土台固めのようなもの。本格的な経営改革には内部統制の改革、特に社員のモラルアップが急務だった。