なぜ英会話ができない?中学レベルで十分、便利なスマホアプリや“ラクな”教材も
日本企業にとって社員の英語力アップは喫緊の課題になっている。「英語の社内公用語化に踏み切った楽天やファーストリテイリングに続けと、社員の英語力強化に乗り出す企業は増え続けている。ソフトバンクは今年から、TOEICで900点以上を取得した社員に報奨金を支給する制度を開始。サントリー食品インターナショナルも若手の英語力アップを目的としたプロジェクトを始め」ている。
英語力アップには、国を挙げて力を入れている
国家公務員の採用に英語能力試験TOEFLを課すと報じられるなど、国を挙げて日本人の英語力アップに本腰を入れ始めているのだ。
これまでも同誌は、2010年9月18日号で『1500語だけで話せる! 非ネイティブの英語術』という特集を組み、グロービッシュ(グローバルとイングリッシュを組み合わせた造語)を紹介し話題を呼んだ。2012年6月2日号では、「脱TOEICの英語術」という特集を組むなど、英語を話せない日本人のために、いかに簡単に上達させるかに重点を置くスタンスだ。
今回の特集でも、「TOEICで高得点を取っても、英語が話せない」というビジネスパーソンの悩みを紹介し、東進ハイスクール講師・安河内哲也氏は、「会話力は間違った数に比例して伸びる。にもかかわらず、恥をかかずに本を読んで勉強しようとする。楽譜が読めてもショパンは弾けないように、話す練習をしなければ話せるようにはならない」と日本人の完璧主義に原因があると指摘する。
そして、7割程度の英語力を習得すれば十分で、あとは実践力、という「7割英語」のススメをする。必要なのは、「中学プラスアルファ」の文法力と語彙力(「グロービッシュ」で使われている基本1500語+自分の仕事で使う専門用語)だ。
スマホのアプリが英語の勉強をリード
今回知っておきたいのは、多くの日本人は英語というよりも英会話に悩んでいるということ(特に「聞き取れない」という悩み)。そして、その英会話のスキルを磨くツールもアプリがリードし始めているということだ。
特集記事『PART1 現場編 今の英語をフル活用』の『各社の7割君が語る 私の英語サバイバル術』では、半導体装置メーカー・ディスコの社員がニュースアプリ「iDaily Pro」(400円)を紹介している。「iDaily」は米・ラジオ局ボイス・オブ・アメリカの最新ニュースが読めるというもので、記事を読み上げる機能も付いており、往復の通勤時のリスニングの勉強にはもってこいだ。また、オリックスの事業投資本部で働く女性は、スマホで英・BBCのニュースなどをチェックしているという。
特集記事『PART2 学習編 賢く極める7割英語術』の『気軽に続けられる英語日記が人気』では、英語で日々の出来事をつづるアプリ「英語日記ドリル」(アルク/800円)が、特に女性を中心に人気だ。日々の出来事をライティングしているうちに、語彙や表現が増え、英語で考える癖がつく。さらに書いたものが蓄積される楽しさもあるという。
やはり、基本は日々の継続、いかにラクに始められるかということなのかもしれない。しかし、上達するための方法は千差万別だ。「教材には、読んで理解はできが、聴き取るには少し難しいレベルの本などを選ぶとよい。『The Japan Times ST』など平易な英語を使った新聞、リーダーズ(薄い読み物)、短いニュース集もある。CD付きのものが便利だ」という。
「英語をどうしても学ばなければいけないのなら、教材は好きな分野に関するものを選んだほうがいい。僕は映画が好きなので、米国に来てから気に入った映画のDVDを購入し、英語の字幕とせりふを照らし合わせながら見た。これを続けていたらある日突然、映画で使われる英語がすんなり耳に入るようになった」(野球解説者・元大リーガー 長谷川滋利氏)
いくら賢い方法でも、英語の学習は時間が必要だ。
(文=松井克明/CFP)