しかし、なぜ1レッスン200円以下という低価格が実現できるのだろうか。DMMに至っては、最安で99円という超破格だ。
「フィリピン人講師だから安くできる」と、もっともらしい解説を目にすることがあるが、その一言で納得できている人はどれだけいるのだろうか。実際に、ほとんどの企業が採用している英会話講師はフィリピン人だ。インターネット時代のメリットを最大限に生かし、スカイプなどを通じて現地の講師と会話をするのだ。
つまり、フィリピンの人件費の安さ、設備投資の低いことが、ビジネスが成立する最大の要因であることはわかる。だが、それだけなのだろうか? いくらフィリピン人の人件費が安いとはいっても、100円や200円のレッスン代では足が出てしまうのではないか。
そこでフィリピンの人件費について調べてみたところ、およそ日本の10分の1程度であることがわかった。フィリピン国内で定められている1日の最低賃金は450ペソ(約1200円)だ。アルバイトの大学生ならば、時給100円ちょっとでも集められるという。つまり、20~30分の1レッスンが200円だとしても、人件費は十分まかなえる。
ハイレベルなビジネス英語は不向きなところも
もう一つ、これには裏がある。それは、実際に1レッスンごとに200円を支払うわけではないところが、オンライン英会話ビジネスのツボなのだ。多くのオンライン英会話学校の授業料は、「ひと月当たり」4000~6000円となっている。つまり毎日レッスンを受ければ、1レッスン当たり200円以下となるが、極端な話、月に1回しかレッスンを受けなければ、1レッスンの授業料は6000円になるともいえる。DMMの最安99円というのも、月額9200円のコースで毎日3回レッスンを受けた場合の値段であって、1回当たりのレッスン料ではない。
しかも、中には3カ月分を前払いさせるスクールもあるので、1回のレッスンで挫折すると超高額レッスンになってしまう。実際のところ、毎日レッスンを受けている人もいるようだが、ビジネスパーソンでは週に数回の人が多いという。
つまり、実際の利用者が皆、1レッスン200円以下で利用しているわけではないのだ。そこにビジネスとして利益が生じる可能性がある。
レッスンの質について見てみると、講師陣に十分な教育・指導をしているといえるスクールは少ない。確かにフィリピン人の英会話能力は高いので、フィリピン人と会話するだけで一定の会話力はつくだろう。しかし、高度なビジネス英語のレッスンを受けたい人には向かないスクールが多いので、登録前には講師陣の質を下調べすることが不可欠だ。安さに引かれて登録してしまうと、後悔することになりかねない。
フィリピン人のなまりを気にする向きもあるが、かなりアメリカ英語に近く、日常的に使う英会話としては十分な英語を身につけられることは間違いない。
まとめると、オンライン英会話は低価格で、自宅で自分の都合のよい時間にレッスンを受けられる利便性があり、比較的良質な英語を学べるという3つのメリットがある。
グループレッスンやマンツーマンなど、直接顔を合わせて行う英会話レッスンもまだまだ根強い人気があるが、お手軽なオンライン英会話の普及は今後一層進むだろう。
(文=沼田利明/マーケティングコンサルタント)