ビジネスジャーナル > 経済ニュース > 証券会社、NISA勧誘の悪質手口
NEW
「ダイヤモンド」vs.「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(11月第4週)

現役証券マンがNISA勧誘の悪質手口を告白~無知な客には損な商品を勧める?

現役証券マンがNISA勧誘の悪質手口を告白~無知な客には損な商品を勧める?の画像1「写真素材 足成」より
 「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/11月23日号)は『守る資産運用』という特集を組んでいる。

「じわじわと物価が上昇し始め、来年4月の消費増税も決まった。デフレ時代には、預金は持っているだけで実質価値が増えた。今後インフレが進むとすれば、預金は逆に目減りするリスク資産となる。だからといって、いきなり預金を投資に振り向けるのも、元本が減ってしまいそうで怖い。そんな読者のために、資産を減らさないことに重点を置いた、『守り』の資産運用術を伝授する」という内容だ。

 出版元のダイヤモンド社といえば、マネー雑誌「ダイヤモンド・ザイ」もあることから、投資関係に強く、マネー運用はこれまでも何度も特集されてきた。かつて“毎月分配型の投資信託は、利益が出ていないのに元本を取り崩す特別分配金を利益だと思い込ませて販売している”と批判するなど、投資家目線もあって定評を得てきた。

 来年1月からはNISA口座(少額投資非課税制度)が始まる。今後は投資に関する知識もますます必要となるだけに、読んでおいたほうがいい特集だ。

●NISA開始まで、あと1カ月

 10月、NISA 専用に開設された口座数は300万に達した。NISAに関しては、以前当サイトに掲載された記事『高齢者マネーを襲うワナ…NISA口座争奪戦でハイリスク&高額手数料商品の売り込み過熱』(http://biz-journal.jp/2013/07/post_2496.html)を一読いただきたい。

 なお、今回の特集でも、『覆面ホンネ座談会 あなたの資産を狙う証券・銀行・投信業界“悪いやつら”の魂胆』でNISA口座の投資勧誘について語っている。

「NISAには、手数料が安いインデックス投信やETF(上場投資信託)が向いているといわれます。でもそれじゃあ証券会社の取り分が少ない。だから実際には、何も知らないお客さんには、手数料が3%台の日本株ファンドなんかを勧めてますね。NISAに向いていない通貨選択型、毎月分配型のハイイールド債券投信でも、とりあえず提案はするようにと上に言われてます」とは現役証券マンの声だ。

 特集記事Part1『これで守る! タイプ別資産運用術』では、元本割れの許容度(リスク許容できない、リスク最大20%、リスク最大40%)と、投資先をどこまで広げるか(日本国内のみ、先進国まで、新興国も含める)という点から、守りの資産運用ポートフォリオを提示する。

 特集記事Part2『本誌独自! 投資商品ランキング』では、国内外の株・債券・J-REIT(不動産投資信託)などの投資信託の中から、資産を守る“下振れしにくい”投信をランキング形式で紹介している。

●投信をこき下ろして、圧力がかかったことも…

 今回、ご紹介したいのは、今号の特集について、同誌のホームページ・ダイヤモンドオンラインで鋭いツッコミを入れている連載「山崎元のマルチスコープ」の『週刊ダイヤモンド「守る資産運用」特集の読みどころとツッコミどころ』(http://diamond.jp/articles/-/44729)という記事だ。

 山崎氏は経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員で、「週刊ダイヤモンド」でも今年の5月まで、10年以上にわたって資産運用をテーマとした連載を持っていた人物だ。投資の際にも、手数料の安いETF(インデックス)を勧めるなど、個人投資家目線での商品選びには定評がある。

 連載を終えても舌鋒鋭く、山崎氏は「(ダイヤモンドのマネー運用特集は)筆者も何度かお手伝いしたことがある。かつて、巨額の残高を集めた毎月分配型の投資信託をこき下ろして、投信会社が編集部ではなく広告部に抗議してきたことなどを(セコイなあ!)、懐かしく思い出す」とさりげなく、投信会社の圧力を明かす。

 ちなみに、企業が出版社に圧力をかけるのは、編集部ではなく直接やりとりする広告部が一般的だ。編集部に圧力をかけても反発されるだけだが、広告部はスポンサーの意向を汲み取って社内をネゴに回るからだ。つまり、「セコイ」というよりも常套手段だ。

 今回の特集の方向性に関しては、「『週刊ダイヤモンド』の読者は、40代から70代くらい、ビジネスに関わっていて平均よりもお金持ちといった人々だろうから、『一攫千金!』(むしろ『週刊SPA!』のような貧乏な読者向けの雑誌が取り上げる)よりも、『守る』というニュアンスが読者の心に響く(略)何はともあれ、預金にへばりついているお金を剥がさなければ、話が始まらないという『感じ』は、筆者も証券マンの端くれなのでよくわかる」と評価する。

●ポートフォリオの前提条件に疑問

 ただし、問題点もあるとして、図解付きで大きく紹介する「守りの資産運用ポートフォリオ(資産配分)」に異議を唱えるのだ。

「リスクの扱いは、まあまあいいとしよう。しかし、ポートフォリオ作成の前提条件となっている、資産分類毎の『期待リターン』が滅茶苦茶なのだ。『国内債券』は1.5%とされているが、誰が見ても現在こんなハイリターンは我が国の債券に存在しない。また、『先進国株式』が『国内株式』よりも1%高い6%なのはまあまあいいとしても、『先進国債券』に6%も期待リターンがあるのはどうしたことか。過去のデータを、そのまま将来に延長したのだろうか。

 『海外資産は為替リスクをヘッジした円ベースの期待リターン』とあるが、『新興国債券』の4%も含めて、債券3資産の期待リターンはいずれも納得しがたい。為替・金利・実績と予測・運用期間、といった期待リターン設定に関わる基本的な概念を、正しく理解していないのではなかろうか。

 筆者個人の常識と判断から述べるに過ぎないが、『この資産配分案を参考にするのは、止めておきなさい』と断言する。申し訳ないが、『不合格!』とダメ出ししたい」と手厳しい。

 つまり、ポートフォリオを読者にわかりやすく見せる際には、期待リターンを高めに、しかも金融商品ごとにリターンにはメリハリをつけたくなるのだが、あまりにも高すぎではないか、というわけだ。ちなみにこのポートフォリオはニッセイ基礎研究所の主任研究員の作成だという。

 他にも、山崎氏は「特集の読みどころとツッコミどころ」を書いているので、ご関心のある方はダイヤモンド誌と併読の価値ありだ。

 しかし、ポートフォリオの前提条件をツッコミはじめると、そもそも特集の意義もあやうくなってくる。

 特集では「政府・日本銀行が推し進めるインフレ目標政策は、預金を目減りさせかねない。目標として掲げられている2%のインフレ率達成は難しいとみる向きが多いが、たとえ1%のインフレでも、名目1000万円の預金が10年後には905万円と約1割も目減りする。2%なら30年後には実質価値が半減してしまう」「将来のインフレに勝つには、リスクを取って運用しないとダメなのだ」と煽るのが特集の出発点だが、10年も1%インフレが続くことを前提にした場合、10年後には、日本経済はかなり回復しているのではないか。すると預金金利も上昇するために、複雑なポートフォリオにそこまでこだわる必要すらもなくなってきてしまうのだ。
(文=松井克明/CFP)

BusinessJournal編集部

Business Journal

企業・業界・経済・IT・社会・政治・マネー・ヘルスライフ・キャリア・エンタメなど、さまざまな情報を独自の切り口で発信するニュースサイト

Twitter: @biz_journal

Facebook: @biz.journal.cyzo

Instagram: @businessjournal3

ニュースサイト「Business Journal」

現役証券マンがNISA勧誘の悪質手口を告白~無知な客には損な商品を勧める?のページです。ビジネスジャーナルは、経済、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!