【シンガポール時事】三菱UFJ銀行のシンガポール現地法人MUFGバンクは6日、外国為替相場の現状と2024年の先行きを解説するセミナーをオンラインで開催した。登壇した同行のアナリストは、現行の円安・米ドル高基調について、「今年の年末にはピークを迎える」と予測。来年1~3月期以降は「むしろ円高の地合いに転じていく」との見方を示した。
◇来年6月待たず米利下げの公算
セミナーの講師は三菱UFJ銀金融市場部のアナリスト、横尾明彦氏が務めた。横尾氏は、米連邦準備制度理事会(FRB)の今後の金融政策について、市場参加者らの間では従来の予測よりも早い来年6月以前の時期に、より速いペースで利下げに転じると予想する向きが強まっているとみられると説明。こうした傾向がフェデラル・ファンド(FF)金利先物市場の価格動向などから読み取れると解説した。
市場参加者らは、利上げに伴う米経済の減速が雇用の伸びの不振に反映されたとの認識だとも指摘。「利上げが年末までにピークを迎えた後、国内経済の悪化を受け、FRBが来年半ばまでに利下げに転じる」と想定しているようだと分析した。
米労働省によると、今年10月の雇用統計で、景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数は前月から15万人増加した。伸びは前月の29万7000人から大きく縮小。市場予想(18万人)も下回った。
◇日銀、来年1月引き締めか
日本の円を巡っては、投機筋の円売りで対米ドルだけでなく、他の通貨に対しても円安が進んだと指摘。「日銀が過去10年にわたって金融緩和を続けたことによる副作用」と指摘した。
ただ、海外投資の配当金などを含めた日本の経常収支は黒字であり、「お金が入ってきやすい構造的な状況がある」とも説明。経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)上は「円高要因が強い」ため、日銀が金融政策を引き締めに転換した際には、急速に円高が進みやすい状況にあると述べた。
その上で、日銀が掲げる2%の物価安定目標はおおむね達成済みの状況にあり、企業の賃上げ方針の確認が取れれば、持続的な物価上昇が見通せたと判断して金融引き締めに動くだろうと分析。来年の春闘を待たずに、今年末には大企業を中心に昇給動向が判明する可能性があることから、引き締めの時期は「来年1月の(金融政策決定)会合後」と予想した。
横尾氏によると、ドル円相場の今後の見通しは23年11~12月が1ドル=141~155円、24年1~3月が134~150円、4~6月が132~148円、7~9月が130~146円。
シンガポール・ドル(Sドル)円相場の見通しは、23年11~12月が1Sドル=103円50銭~113円、24年1~3月が100円~109円50銭、4~6月が99円~108円50銭、7~9月が98円50銭~108円。(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2023/11/08-11:26)