日銀は3月18、19両日に開く次回の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除も視野に議論する見通しだ。2024年春闘の賃上げ率が昨年を上回るとの見方が広がる中、日銀が賃金と物価がそろって上昇し、物価上昇率を前年比2%で安定させる目標を持続的に達成するシナリオに自信を深めているためだ。
黒田東彦前総裁の下で13年4月に導入してから10年以上続く大規模金融緩和策の転換点が近づいている。
「2%の物価目標実現がようやく見通せる状況になってきた」。日銀の高田創審議委員は2月29日に大津市で行った講演で繰り返し述べ、緩和を正常化する条件が整いつつあるとの見解を強調した。これを受け、金融市場では早期の政策修正観測が広がり、円相場と金利が上昇した。
高田氏は講演後の記者会見で「3月解除」を支持するかと問われ「3月でもその次(の4月会合)でも、考えながら対応したい」と発言。3月会合で、07年以来17年ぶりの利上げが選択肢となる可能性を排除しなかった。
今年1月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の上昇率は2.0%で、1年10カ月間、日銀の目標以上の伸びが続く。
生活実感に近い生鮮食品を含む1月の総合指数は2.2%上昇し、その内訳では賃上げが反映されやすいサービス価格の上昇率がモノの価格の伸びを2年10カ月ぶりに上回った。交渉が本格化した24年春闘では、大手企業で労働組合の賃上げ要求に満額回答する動きも出始めている。
植田和男総裁は2月22日の国会答弁で、日本経済の現状について「デフレではなくインフレの状態にある」と強調。「雇用・賃金が増加する中で物価も緩やかに上昇する好循環が強まる」との見解を示した。物価や賃金は上がらないと多くの国民が考えるデフレ心理の払拭が見通せれば、マイナス金利解除に向けた議論は詰めの段階に入る。
◇日銀幹部の発言
【植田和男総裁】
▽物価上昇率が2%に向けて徐々に高まっていく確度は引き続き少しずつ高まっている
(1月23日記者会見)
▽デフレではなくインフレの状態にある(2月22日国会答弁)
▽雇用・賃金が増加する中で物価も緩やかに上昇する好循環が強まる(同)
【内田真一副総裁】
▽今度こそ日本経済が変わる素地が整ってきた(2月8日奈良市内での講演)
▽2%(物価目標)の実現を見通せる確度は少しずつ高まってきている(同日の記者会
見)
【高田創審議委員】
▽2%の物価目標実現がようやく見通せる状況になってきた(2月29日大津市内での講
演)
▽(マイナス金利解除について)3月でもその次でも、考えながら対応したい(同日の
記者会見)
(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/02/29-20:27)