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「画期的」合意、効果は限定的=ドル高の構図変わらず―日米韓、為替連携アピールも〔潮流底流〕

記事提供元=時事通信社
G7・G20などでの為替を巡るやりとり
G7・G20などでの為替を巡るやりとり

 世界銀行と国際通貨基金(IMF)の春季会合に合わせて今週、米ワシントンで開かれた一連の国際会議で、注目されたのは初めての日米韓財務相会合だ。会合では円安とウォン安に対する日韓の懸念を共有。3カ国が為替で「緊密に協議する」との共同声明を出し、市場をけん制した。鈴木俊一財務相は「画期的な成果」と強調したが、効果は限定的でドル高是正には至らなかった。

◇周到な根回し

 日米韓財務相会合は17日、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に先立って開かれた。鈴木氏はワシントン入りした16日には米国のイエレン財務長官、韓国の崔相穆経済副首相兼企画財政相とそれぞれ個別に会談。日韓で自国通貨安への深刻な懸念を共有すると、日米の会談では鈴木氏が為替に関し「行き過ぎた動きには適切に対応する」との日本の立場に理解を求めた。

 約34年ぶりの1ドル=154円台という歴史的な円安水準を更新した日本と、ウォンが約1年5カ月ぶりの安値を付けた韓国。財務省の神田真人財務官は両国は輸入時のドル建て決済の比率が高く、「為替変動に対する感応度が高い」点で似た境遇にあると日韓連携への手応えを示した。

 周到な「根回し」が功を奏し、前例のない声明につながったとみられるが、ある国際金融機関幹部によると、米国は自国の製造業に不利なドル高の進行には過敏に反応する。今回は逆方向の動きでの協調で、ハードルが低かった可能性はある。

◇ドル高は長期化か

 日米韓財務相会合の直後に開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、日本の主導で「為替の過度の変動は経済に悪影響を与え得る」とする、G7の基本姿勢を再確認する文言が共同声明に盛り込まれた。この結果、対ドルで円相場は一時上昇したが、効果は持続せず、足元では154円台半ばを挟んで推移している。

 ドル高基調の背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が後退している事情がある。FRBのパウエル議長は16日、「われわれの決定が世界に大きな影響をもたらすと十分認識している」と話したが、根強いインフレ圧力を背景に利下げ開始のタイミングが後ずれをするとの見方は強い。対ドルでの円安要因の大部分は「米国と日本の金利差拡大を反映したもの」(国際金融筋)とされ、FRBが利下げするか、日銀が一段の利上げに踏み切らない限り、状況は変わらない。

 G20財務相・中銀総裁会議でも、為替を巡る直接の議論はなかったが、米国の高金利による自国からの資金流出や、ドル建て債務膨張への懸念を示す国はあったという。終了後の会見では、議長国であるブラジル中央銀行のカンポスネト総裁が「強いドルは問題で、各国で政策対応を迫られる」と警戒感を示した。

 日本にとっては、ドル高是正に向けた国際的な理解が進めば、為替介入実施のハードルは下がる。「為替介入を行うことが適切な状況もあり得る」(IMFのエイドリアン金融資本市場局長)といった見方があることも事実だ。ただ、ドル高をもたらす基本的な構図が変わらなければ、口先介入も実際の為替介入も効果は不透明で、引き続き日本の通貨当局は神経戦を強いられそうだ。(ワシントン時事)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/04/19-21:35)

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