日銀が1日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でプラス13と、6月の前回調査から横ばいだった。電気機械が大幅に改善するなどIT関連需要が回復傾向にある一方、中国など海外需要停滞への警戒感も目立ち、強弱両面の要因による綱引きとなった。
一方、大企業非製造業はプラス34(前回プラス33)。幅広い業種で価格転嫁が進展したのを背景に、2四半期ぶりに改善した。
DIは、業況が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」を引いて算出する。
大企業製造業のうち、半導体市況回復などの恩恵を受けた電気機械はプラス11(同プラス1)と大幅に改善。歴史的な円安水準の修正に伴い原材料価格の上昇が一服し、紙・パルプや化学も好調だった。中国向けを中心とした需要伸び悩みなどで鉄鋼はマイナス5(同0)に悪化。自動車はプラス7(同プラス12)と、台風による工場停止などが響いた。
大企業非製造業では、台風や猛暑の影響で夏物が売れるなどした小売りがプラス28(同プラス19)と改善した一方、レジャー施設などを含む対個人サービスは悪化した。インバウンド(訪日客)需要などで、宿泊・飲食サービスはプラス52と、3月調査と並ぶ過去最高になった。
全規模全産業の雇用人員判断DIはマイナス36(同マイナス35)と人手不足感が一段と強まった。特に中小企業非製造業はマイナス47で過去最低となった。
中小企業の景況感は製造業が0(同マイナス1)、非製造業はプラス14(同プラス12)と、いずれも3四半期ぶりに改善した。
先行きの景況感は、大企業製造業がプラス14と改善、非製造業はプラス28と悪化を見込む。
全規模全産業の2024年度の想定為替レートは1ドル=145円15銭(同144円77銭)。24年度の大企業全産業の設備投資計画は、前年度比10.6%増となった。
◇9月日銀短観の主な指標
6月 9月 12月予想
▽業況判断指数
(DI、「良い」―「悪い」)
大企業製造業 13 13 14
大企業非製造業 33 34 28
中小企業製造業 ▲1 0 0
中小企業非製造業 12 14 11
▽販売価格判断指数
(DI、「上昇」―「下落」)
大企業製造業 29 26 26
大企業非製造業 29 29 29
▽仕入価格判断指数
(DI、「上昇」―「下落」)
大企業製造業 47 41 39
大企業非製造業 47 46 44
▽雇用人員判断指数
(DI、「過剰」―「不足」)
大企業製造業 ▲18 ▲19 ▲22
大企業非製造業 ▲39 ▲39 ▲39
▽24年度設備投資計画(土地含む、前年度比増減率%)
大企業製造業 18.4 18.8 ―
大企業非製造業 7.0 6.0 ―
▽全規模全産業の24年度想定為替レート(9月)
1ドル=145円15銭
(注)▲はマイナス、―は数値なし
◇日銀短観のポイント
一、大企業製造業DIはプラス13と横ばい。先行きはプラス14
一、大企業非製造業DIはプラス34と2期ぶり改善。先行きはプラス28
一、中小企業製造業DIはゼロで3期ぶり改善。先行きはゼロ
一、中小企業非製造業DIはプラス14と3期ぶり改善。先行きはプラス11
一、大企業の自動車DIは5ポイント悪化のプラス7
一、大企業の小売DIは9ポイント改善のプラス28と過去最高
一、大企業製造業の販売価格DIは3ポイント低下のプラス26
一、大企業製造業の仕入価格DIは6ポイント低下のプラス41
一、24年度の大企業全産業の設備投資計画は前年度比10.6%増
一、全規模全産業の24年度想定為替レートは1ドル=145円15銭
(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/10/01-12:41)