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再エネ融資を拡大する地方金融…脱炭素の名の下で膨張、地方創生の切り札かバブルか

2026.01.16 2026.01.15 23:33 経済

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●この記事のポイント
・人口減少と低金利で貸出先を失った地方銀行にとって、再生可能エネルギー融資は数少ない成長分野となった。しかし、その拡大の裏で、事業実態を伴わない“金融商品化”が進みつつある。
・地域資源を生かし、再エネ収益を地元に還流させる成功例がある一方、審査の甘さや転売目的の案件も増加。地銀の「目利き力」が今、厳しく問われている。
・金利上昇、出力制御、FIT終了後の設備老朽化──再エネ融資は将来、座礁資産化するリスクも抱える。地銀は伴走者としての覚悟を持てるのかが分岐点だ。

 かつて地方銀行にとって、エネルギー事業への融資は、電力会社やインフラ企業向けの「堅実だが地味」な案件にすぎなかった。しかし、2012年のFIT(固定価格買取制度)導入を境に、その景色は一変する。

 今や再生可能エネルギー事業は、人口減少と低金利に喘ぐ地方銀行にとって、数少ない「成長ストーリー」を描ける分野となった。だが、融資競争の過熱とともに、事業実態を伴わない“金融商品化”が進み、再エネは次第にマネーゲームの様相を帯び始めている。

 再エネ融資は地方創生の福音となるのか。それとも、かつての不動産バブルのように、地域金融を蝕む負の遺産となるのか。その分水嶺はいま、静かに迫っている。

●目次

地銀を突き動かす「背に腹は代えられない」事情

 地方経済の地盤沈下が続くなか、地銀の伝統的な貸出先は急速に細っている。製造業や小売業の設備投資は鈍く、住宅ローンも人口減少で伸び悩む。その一方で、際立って増えているのが再エネ関連融資だ。

 環境省や金融庁の資料を見ても、地域によってはエネルギー関連事業への融資残高の伸び率が、全産業平均を大きく上回っている。太陽光や風力は広大な土地を必要とするため、必然的に地方が主戦場となり、地銀にとっては「地元で完結する数億円規模の大型案件」となる。

 さらに近年は、融資にとどまらず、地銀自らが事業スキームに深く関与する動きも目立つ。

■成功例:秋田銀行に見る「地域密着型モデル」
 風力発電の適地として知られる秋田県では、秋田銀行が中心となり、地域一体での風力発電事業を支援してきた。同行は子会社「あきぎんリサーチ&コンサルティング」などを通じ、事業計画の策定から関与し、単なる資金提供者にとどまらない役割を果たしている。

 外資ファンド主導になりがちな再エネ事業において、売電収益を地域内に還流させるこのモデルは、「地銀ならではの価値」を示す好例だろう。

忍び寄る「マネーゲーム」の罠と審査の形骸化

 一方で、再エネ事業がFITによる「安定収益」というお墨付きを得たことで、金融商品としての側面が過度に肥大化しているのも事実だ。

 太陽光発電設備を小口証券化し、個人投資家から資金を集めるスキームはすでに一般化した。資金調達の裾野が広がった反面、「発電効率」や「O&M(運転・保守)」の実態よりも、表面上の利回りだけが独り歩きする土壌が生まれている。

 問題は、こうした案件に対する地銀の目利き能力だ。融資残高の拡大を求められる営業現場では、「再エネ」という看板だけで審査が甘くなるケースも否定できない。

■失敗例:不適切融資と事業破綻のリスク
 過去には、地権者との調整不足や土砂災害リスクを軽視したまま融資が実行され、工事中断に追い込まれた太陽光案件も報告されている。また、発電設備を完成後すぐに転売する「キャピタルゲイン狙い」の事業も少なくなく、長期的なエネルギー供給という本来の目的が後景に退いている例も目立つ。

将来、貸し倒れリスクは「逆回転」するのか

 再エネ融資が将来「負の遺産」に変わるシナリオは、決して絵空事ではない。

 1.金利上昇リスク
   金利正常化が進む中、変動金利で借り入れた事業者の採算は急速に悪化する可能性がある。

 2.設備老朽化リスク
   20年のFIT期間終了後、メンテナンス費や撤去費用が重くのしかかる。

 3.出口戦略の欠如
   採算が崩れた設備は、担保価値を失い、地方に放置された「粗大ゴミ」と化す恐れがある。

専門家が警鐘を鳴らす「再エネ融資」の死角

 金融とエネルギーの専門家は、地銀の再エネ融資について一様に慎重姿勢を崩さない。

■「事業評価能力」の限界
 戦略コンサルタントの高野輝氏はこう指摘する。
「融資担当者が、日照や風況データの妥当性を自力で検証できるケースは多くありません。メーカー提示のシミュレーションを前提にした融資は、実質的には“業者信用”に近い」

■出力制御が崩す収益モデル
 高野氏は、送電網制約を最大の盲点と見る。
「九州や東北では出力制御が常態化しています。FIT価格が固定でも、売電量が減ればキャッシュフローは成り立たない」

■「座礁資産」化の恐怖
 金融アナリストの川﨑一幸氏は、FIT終了後をこう警告する。
「21年目以降に修繕資金が枯渇すれば、再エネ設備は一気にストランデッド・アセットになる」

 再エネ投資の拡大は、脱炭素社会に不可欠だ。しかし、それが融資ノルマや利回り至上主義に堕すれば、地域金融に深刻な爪痕を残す。

 地方銀行はいま、単なる資金供給者から、事業の持続性を見極める「伴走者」へ進化できるかを問われている。再エネを地方の打ち出の小槌にするのか、それとも時限爆弾にするのか。その分岐点は、地銀が「看板」ではなく「実態」を見抜く力を取り戻せるかにかかっている。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)