「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/2月22日号)は『パソコンで終わらない 切り刻まれるソニー』という特集企画を掲載している。
2012年11月に欧州系格付け機関フィッチ・レーティングスが、ソニーの長期信用格付けを23段階のうち13番目の「投機的」水準に格下げしたのに続き、今年1月27日、米ムーディーズも1段階引き下げて「Ba1」としたと発表した。これは、フィッチ同様に、投資に向かない投機的水準との評価だ。投資不適格という格付けを受けたソニーだが、前CEOのハワード・ストリンガー体制下で、テレビ事業での営業赤字が11年度(12年3月期)までの8年間で計6000億円以上に達したため、ストリンガー氏に代わって12年4月、平井一夫氏がCEOに就任した。12年度(13年3月期)決算の内容は、売上高が6兆8008億円(前期比4.7%増)、営業利益が2301億円(前期は672億の赤字)、税引き前当期純利益が2456億円(同・831億円の赤字)と、5年ぶりに純利益の黒字化を果たした。
その勢いに乗り、13年度通期も最終損益で300億円の黒字予想を立てていたソニーだが、2月6日の13年度第3四半期決算説明会では、一転して1100億円の赤字に沈む見通しが示された。期初に1000億円の営業利益を見込んだエレクトロニクス(エレキ)部門の赤字継続が要因で、10期連続の営業赤字が見込まれるテレビ事業を、14年7月をめどに分社した上で完全子会社にすると発表した。事業の独立性を高めて経営責任を明確化すると同時に、意思決定のスピードを引き上げ15年3月期の黒字化を目指す方針だ。
●パソコン事業の売却、中高年は戦力外
また、300億円の赤字に沈むとみられるパソコン事業に関しては、投資ファンドの日本産業パートナーズへ売却することを発表した。
パソコン事業は1996年に「VAIO」を発売して以来、VAIOブランドで展開。「個性的なスタイルとビデオ編集機能の強化で一世を風靡し、とりわけ欧州での人気は高かった。新興国向けの低価格品など普及品をつくり始めたことで、10年度には年間870万台とピークをつけた」。だが「質より量を追うようになった。年1000万台の出荷を目指し、それまでの『VAIO』とかけ離れた安物を大量に指示された」と、ある現役社員は言う。気がつけば、「パソコン市場の不振とともに利益の出ない体質になっていった」(スペシャルレポート01-2『「保身は得意」との悪評 逆風受けるチーム平井』)。
ソニーでは「現在およそ1100人がパソコン事業に従事している。このうち、新会社に移ることができるのは250~300人程度。残る800人強は他の事業部門への配置転換を検討する」。配置転換とは名ばかり、自力で異動先を見つけなければならない。「見つけられなかった場合、次の選択肢として『早期退職』が待っている。割増退職金は月収の36カ月分。13年3月期に国内外で1万人の人員削減を行ったときの割増退職金が40カ月分だったのと比べると若干少ないが、それでもかなりの高水準」だ。
つまり、パソコン事業の中高年社員たちは「戦力外」となり、「キャリアデザイン室」所属社員と同等の扱いを受けるのだ。「キャリアデザイン室」とは、戦力外とされた中高年社員を集め、社内外への求職活動を行わせるために設立された部署。グループ全体で100人程度が籍を置く、事実上の追い出し部屋だ。詳しくは、当サイト記事『ソニー、リストラ室の実態 2つの意味で天国!?40歳過ぎて仕事はスキルアップ学習だけ…』を参照いただきたい。
多くの中高年社員が希望退職の道を選ばざるを得なくなるが、ソニーのエレキ部門の不振は深刻で、今後も大規模な希望退職の募集を行いかねない。また、デジカメやゲームなども苦戦しており、ソニーが「エレキのコア3事業」と位置付けるモバイル、ゲーム、そして画像センサーやデジカメなどのイメージングさえもその基盤は盤石ではないのだ(スペシャルレポート01-1『パソコンで終わらない 切り刻まれるソニー』)。