延べ床面積は1割縮小、1戸当たり1500万~2500万円の建て替え費用を負担、それに合意しない場合は持ち分を事業協力者(建て替え業者)に売却して出ていくというスキームで、住み続ける選択をしたのは13人。「大半は地元に愛着のある元居住者だ。専有面積は以前の約半分になることもあるが、それでもこの立地で物件を新規購入することを考えれば、割安と判断できる。一方で賃貸に出していた所有者は建て替え期間中は賃料収入がなくなるので、持ち分を売却して出ていくのが合理的な判断になる」という。
今年6月に成立(12月施行)した改正マンション建て替え円滑化法では、耐震性不足のマンションを対象に、区分所有者の5分の4以上の賛成でマンション敷地を一括売却できる制度が創設された。これまでは全員の同意が必要だったが、要件が緩和されたことで売却、解散が現実的な選択肢となってきた。
ただし、これは解体費用を敷地売却資金でまかなうことになるため、地価が安い地方都市では、解体費用が捻出できないケースも出てくるのではないかと懸念する。
「建て替え・解体時期が迫っているマンションは30年の長期修繕計画の期間を過ぎ、計画に合わせて徴収してきた長期修繕積立金が底を突いているところも多い。『マンション解散』に備えて、解体費用をどう積み立てておくのか。木造戸建て以上に、マンションの空室問題は深刻な社会問題になる可能性がある」と警鐘を鳴らす。
●マンション、廃墟化する恐れも?
また特集記事『実は危ないタワーマンション』では、アベノミクスや相続増税の追い風もあり、売れ行き好調な超高層マンションだが、最大の難関は築30年過ぎに訪れる2回目の大規模修繕工事だという。
「この時には外壁工事だけでなく、エレベーターや給排水システムなどの設備を交換する必要が出てくる可能性がある。どこの超高層マンションも実施した経験がないので、実際にいくら費用がかかるかわからない」
人口減少が進む中で、マンションは廃墟化する恐れもある。
今後は建て替え適齢期を迎えるマンションが年5~10万戸ペースで増えていく。総務省が5年おきに公表する「住宅・土地統計調査」によると、13年の日本の空き家は約820万戸、総住宅に占める割合は13.5%と、いずれも過去最高を記録している。
こうした特集を読むと、いつ直下型地震がくるかわからない現在、ますます分譲より賃貸がいいのではないかという気持ちになってくる。
(文=松井克明/CFP)