●生き残ったサブプライムローン
ちなみに、サブプライムローンといえば、日本では低所得者層を対象に住宅購入資金として貸し付けるものが有名だ。借り手にとっては返済負担の重さを意味する高い金利が、投資家にとっては魅力だからだ。ハイリターンを売りにしたさまざまな金融商品に無分別に組み込まれて、ベア・スターンズやリーマン・ブラザーズなどの破たんを招き、リーマンショックを引き起こした元凶として記憶している読者も多いはずである。
ところが、米国ではサブプライムローンが消滅することはなく、住宅から自動車に融資対象を替えただけで生き残った。その結果、サブプライム層への自動車ローンはリーマンショック後に倍増したのだ。前述のニューヨーク・タイムズの記事によると、実に新規の借り手の4人に1人が、この層になっているという。
ニューヨーク連邦準備銀行の統計によると、自動車ローンは14年第2四半期(4-6月期)にリーマンショック後の最高額を記録したが、このうちサブプライム自動車ローンは206億ドルと2010年第2四半期の2倍近くに膨らんだ。
人気の理由は2つある。第一は、貸し手の大手銀行が、住宅市場の低迷から不調だった住宅抵当貸付に代わるものとして、積極的に自動車ローンを拡大しようとしたことだ。そして第二は、かつての住宅サブプライムローンブームの時と同じで、高利回りを求める保険やヘッジファンドなどの投資家が、サブプライム自動車ローンを組み込んだ商品に数十億ドルのマネーを湯水のごとく注ぎ込んだことである。
こうした融資の急増は、安易な返済期間の長期化や甘い審査で融資枠を拡大しているのではないかとの懸念を呼んでいる。自動車ディーラーがローンの申請時に借り手の収入を水増ししたり、雇用情報を偽って、失業して無収入の人でも自動車を購入できるようにしたりしていないか、というのだ。実際、毎月の返済額を抑えるため、返済期間を超長期化することが横行しており、結果として自動車の市場価値を大きく上回る資金を貸し付ける融資が蔓延しているという。これでは借り手が返済不能になったからといって、担保の自動車を差し押さえて処分しても、ローンの回収は不可能だ。
違法行為には当たらなくても、この種の問題のある融資慣行が横行していると、最終的に銀行や投資家が損失を被り、金融危機が再発するきっかけになりかねない。自動車サブプライムローンは、リーマンショック前の住宅サブプライムローンに比べればまだ規模が小さいとはいえ、決して見過ごしてよい問題とはいえないのである。付け加えれば、あまりにも好調な自動車販売が、中古車市場への供給圧力になり、中古車市場の需要不足が起きると懸念する声もあるという。