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ほんの一例だが、AIIBのライバルと目されているADBの国別融資残高をみると、その実態が浮き彫りになる。中国は全体(117億2000ドル)の18.1%を借り入れており、インドに次いで第2位の大口の借り手なのである。片方で大口の借金をしておいて、もう片方でそれを上回る大口のスポンサーになろうとしているのだ。ちょっとした綱渡りの状態といってもよいかもしれない。
冒頭でも指摘したように、リーマン・ショック後、中国は政府主導の大型景気刺激策に打って出て、不動産バブルの崩壊に直面、多くの地方自治体やシャドウ・バンクと呼ばれるノンバンクの経営が危機的状況に陥ったり、日本の7~8倍の生産設備を構築した鉄鋼業が過剰生産設備を背負い込んで四苦八苦したりしているとされている。
だが、中国からは、その深刻さも、克服策もほとんど満足にディスクローズ(情報開示)されていないのが実情だ。米連邦準備理事会(FRB)が今年秋にも踏み切るとされている利上げが現実になれば、国際的な通貨危機が起きかねない。そうなれば、中国に注ぎ込んでいた資金を回収する向きが続出しても不思議はない。そういった事態に備えて、中国は国をあげて外貨獲得に邁進しており、日本にもラブコールを送っているのではないか。そんな見方が成り立つのが、昨年暮れからの状況なのだ。
AIIBの大口救済先の第1号が出資最大手の中国というような悪夢が、まったく起きるリスクがないと言い切れるのか。経済は規模の大きさだけで安全性が保障されるものでは決してない。一連の問題で後手に回りっ放しだからこそ、日本は今一度、中国の財政事情を徹底的に検証しておく必要があるだろう。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
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