日経平均株価の2万円台回復が視野に入ってきた。「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/3月14日号)の特集『最新 買っていい株220 買ってはいけない株80』によれば、「日経平均株価が15年ぶりに2万円台の大台に迫っている。好調な企業業績がその背景にある」という。2月に入って海外投資家は、業績の好調な日本企業に対し、大きく買い越しに転じている。ただし「今回の上げ相場は、業績相場の様相が強い。円安で好調な自動車関連銘柄は上昇する一方、原油安で損失が出ている商社の株式は低迷している」(同記事より)ために、個別に銘柄をしっかり見て選ぶ必要がある。
2015年度の株価予測は、「今後1年の日経平均株価の最高値は(略)門司総一郎・大和住銀投信投資顧問経済調査部長が2万5000円(15年12月)、広木隆マネックス証券チーフ株式ストラテジストが2万4000円(16年3月)」(同記事より)などと軒並み2万円を超えて、16年に向け上昇基調が続くと予想している。
「最も強気予想の門司氏は、成長戦略が進展すればという条件付きながら『企業業績が上ブレし、さらにPERが上昇すれば、日経平均が2万8000円を付けるのもあり得ない話ではない』と言う」(同記事より)ほどだ。
ただし、マイナス材料もある。利上げのタイミングが9月と予想される米連邦準備制度理事会(FRB)の動き、安倍政権の安全保障への傾斜による経済政策の後回し、消費者物価指数の前年同期比がマイナスとなる可能性もある日本銀行の金融政策だ。
局所バブル状態?
「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/3月28日号)の特集『これはバブルか本物か 株価爆上げ2万円』によれば、株高の好条件が揃っているという。それは、堅調な企業業績、130兆円の積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)をはじめとする公的マネーによる強力な買い支え、大企業の多くがROE(自己資本利益率)の向上を目的として自社株買いの実施を続々と表明していること、株主還元の改善が進んでいることなどだ。
「2月からの日本株上昇を受けて、株価見通しをいち早く引き上げたのがゴールドマン・サックス証券だった。新たな見通しでは日経平均が3カ月後に1万9400円、6カ月後に2万0600円、年末時点で2万1700円に到達するとしている」(同記事より)
今回の株高の傾向は、局所バブルという点にある。割安株は放置される一方で、割高株となった明治ホールディングスやキッコーマン、エーザイといった食品や医薬品セクターの銘柄が買い進められているのだ。割高株に買いを入れているのはGPIFやその他の年金、さらには地方銀行ではないかと見る。
「食品や医薬品などのディフェンシブ(守りに強い)銘柄の選好が強まっているのは、日本だけでなく米国などでも見られる現象である。世界的な金融緩和で利回り低下が進んだ債券に代わってこれらの銘柄が買われる動きは、『株式の債券化』ともいわれている」(同記事より)
また、5月にかけてはヘッジファンドの動きに注意という。
「一部米欧金融機関が相当額の資産圧縮を行う方針だ。資本を引き揚げられる側のヘッジファンドが新たな出資先を見つけるべく運用成績の無理な押し上げ(超近視眼的な投機トレード)を行う可能性もある。日本株もこの流れにのみ込まれれば、株価の下落が予想される」(同記事より)
今秋の日本郵政の上場までは政府の買い支えが期待されるというが、その頃にははたしてどうなっているだろうか。
(文=松井克明/CFP)