そうしたことがあって変わってしまったので、中学時代はひどくいじめられました。だから高校は女子が多い服飾科に進んで、女装して通っていました。僕は女装すると釈由美子さんみたいになるんですよ! 21、22歳の頃には五反田のキャバクラで女装して働いていて、3カ月間トップになったこともありました。お店の女の子たちはみんな知っていましたが、店員には僕が男だというのは内緒でした。でも、3カ月目に同級生がお客として店にきて、「しんご、お前何やってんだ」とついに店にバレて、クビになっちゃったんですよね。
それでも、高校卒業後は3年間ちゃんと石油会社に勤めて、ドラム缶のなかの不純物検査をしていました。そのあとは、キャバクラやバーで働いたり、テレクラのアルバイトをしたこともありました。こんな感じになっちゃったので、とにかくいろんな世界を見て、自分を試したかったんですよね。
「もう僕には山しかない」
――今回の舞台『VIVID ~』は、そうしたご経験をされているからこそ演じられる役柄ですね。
楽しんご 物語は、深夜の東京・新宿を舞台に、ホテルのロビーに集まった行く当てのない人々の、一晩のふれあいを描いた会話劇です。僕が演じる“てんてん”という女の子は、突っ張って、なんでも人にかみつく性格だから、他人に受け入れられない。でも、人と絡みたくて、寂しさや満たされないものを抱えている。僕が女装をしていた時と境遇が似ているので、すごく自分と重なります。この舞台の稽古を始めてから、本当に毎日が楽しくてしょうがないんです。共演の皆さんのエネルギーもすごくて、その波動に引き寄せられています。
――事件があったから、さらに人間として深みが増した部分もあるのでは。
楽しんご 「必要な経験だった」「反省しています」と建前で言ったこともありましたが、まったく必要のない出来事だったし、反省もしていません。だって恥じるところがないですからね。僕たち世代が子供の頃は、学校の先生に叩かれることもあったけど、それは信頼関係だし、愛情表現だった。それを写真に撮ってさらしたり、すぐに訴えたりするのはおかしいと思います。最近は些細なことでバッシングする傾向がありますよね。ネットニュースのコメント欄を見るとひどいですね。僕に対してだけでなく、他の人に対してもひどい。あいつ嫌いとか、気持ち悪い、死ねとかのコメントばかり。そういう発言をするなら、自分の身元を明かして実名をさらせと思う。