「素晴らしい映画でした。2018年の日本映画のベスト3に、私は挙げました」
不倫関係になった唐田えりかと東出昌大の出会いは、濱口竜介監督の映画『寝ても覚めても』。映画業界関係者の間では、「改めて観てみたら、かなり良い映画で驚いた」「唐田は初主演の映画でこんなにいい“ハマり役”に巡り合えたのに、もったいない」と話題になっているという。
作品について、映画業界関係者は語る。
「音楽も含めて、かっこいい映画でしたね。唐田が演じているヒロインは、ちょっと、いっちゃってる女の子。東出は一人二役。一人は浮世離れしたわけのわからない男だけど、芸能界で成功していく。もう一人は困った人を助けてあげるような、優しさのあるサラリーマン。ヒロインはサラリーマンと平穏な家庭を築くところだったのに、それをぶち壊して、浮世離れした男に走ってしまう。恋人が他の人に行ってしまうというのは、誰の人生にも起こりそうなこと。それを非現実的な展開で描いています。そのまま突っ走っていけばいいのに、最後にヒロインが正気に戻っちゃって贖罪している。そこにちょっと違和感を感じましたけど、芸術的な映画として成立しています」
唐田と東出の演技はどうだったのだろうか。
「2人は似たタイプの役者なんですよ。演技は下手だけど、存在感があるという。東出が俳優デビューしたのは『桐島、部活やめるってよ』でしたけど、なんかボーッとしてて下手だけど存在感があるのは、あの時から変わっていません。唐田も下手なのが、何を考えているのかわからない女の子の透明感を際立たせています。
それに対して、脇を固めている役者がうまい。友人役の山下リオと同僚役の瀬戸康史が演劇をめぐってけんかになる場面があります。会話をしていて感情が揺れ動くというのは濱口監督が得意とするシーンで、山下と瀬戸は見事に演じています。そこで唐田と東出は浮いちゃってるんですけど、それが映画の世界観に嵌まっています」
テレビドラマやCMからの降板が相次ぎ、芸能界の表舞台から去る可能性も出てきた唐田と東出だが、今後の展望はどうだろうか。
「濱口さんはすごい才能のある監督です。唐田さんはもともとモデル志向で演技の経験が浅かったところを、『寝ても覚めても』で濱口監督からヒロインに大抜擢されてカンヌ映画祭まで行った。つまらないことでつまずいて、もったいないなと思います。輝かしいキャリアでスタートした東出にしても、同じことが言えます。
2人とも、これで演技はうまくなるでしょう。昔から、芸の肥やしと言いますけど、いいことでも悪いことでも、どんな経験でも肥やしにはなりますから。でも、復帰するまでの時間はかかるでしょう。特に唐田さんの場合、『寝ても覚めても』しか目立ったキャリアがないですから。同じように不倫で干されたベッキーが、昨年公開された映画『麻雀放浪記2020』に出ていました。アンドロイドと麻雀クラブのママの一人二役で、それまでのベッキーにはなかった毒気のある演技をしていました。
唐田と東出にそういうことができるかといったら、かなり疑問ですね。ベッキーにしても、『麻雀放浪記2020』を好むようなタイプの映画マニアには受け入れられたとしても、本格復帰にはつながりませんでしたからね」
唐田と東出が、一回りスケールの大きい役者となって、戻って来てほしいと願うばかりだ。
(文=深笛義也/ライター)