「無関心」
生瀬勝久の演技力と、中山美穂の“かすれ声”を伝えるに留まった第8話。喜多見切子(井川遥)と貴族探偵の因縁や、前回初登場した秘書・鈴木(仲間由紀恵)の存在については描かず、新たな事件がメインだった。いつも通りの展開で特筆すべきことはなく、ゲスト出演したキノコ頭の上原多香子に見せ場がないこと然り、事件の内容もトリックも「ふーん」という感じだった。
相葉の演技にはすでに興味も期待もないのでスルー。生瀬の演技が面白いことももう充分にわかっていたので「さすが、真剣な演技をしてもキャラクターが崩れない」と感心する程度。興味の置き所がないところに、いつも以上にメイド・田中役の中山美穂がしゃべるので、そこだけにピントが合ってしまった。「こんなに声量なかったっけ?」と。
しゃべればしゃべるほど、喉が締め付けられているような発声になり、聞いているこちらが苦しくなってくるのだ。同ドラマがスタートして以降、すでにインターネット上では波紋を呼んでいたようだが、もはや放送事故並みに滑舌が悪くてセリフが聞き取りにくく、若干声も震えているような気がして、中山の輝かしい経歴を一人で回想しながら、声の問題についてグルグルと考えはじめてしまった。そういえば、人気絶頂で歌手活動も忙しそうにしていたとき、歌番組で熱唱する中山に声量のなさを感じていたな……と思い出した。もう、20年以上前か。ドラマとまったく関係のない中山の声量問題を考えているうちに、気が付いたら第8話が終了していた。
これはドラマを観るものとしての末期症状かも知れない。作品への興味が完全に失われている。高級レストランに行って、「テーブルクロスが何か変だったね」という感想を持つ感じだろうか。好きの反対は嫌いではなく「無関心」というが、その域に達してきたのかも知れない。この状態は視聴率も物語っている。
(文=西聡美/ライター)