嵐の相葉雅紀が主演する月9ドラマ『貴族探偵』の第10話が19日に放送され、平均視聴率は前回より0.4ポイントダウンの8.0%(関東地区平均、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。
放送回によってクオリティーの差が激しい今作。前回は映像化が難しいとされていた原作の短編を改変し、ドラマオリジナルのトリックで原作読者さえもだましてきた脚本が評価されたが、第10話は一転して見る価値のないドラマになってしまった。
見る意味があったといえる部分は、愛香(武井咲)が貴族探偵の本名だとにらむ「政宗是正」なる人物は日本有数の門閥である具同家の商売敵であり、あまり良くないうわさで知られているということくらい。鼻形(生瀬勝久)が警察のデータベースで調べた政宗是正は、シンガポールを拠点に暗躍しているとの情報はほぼ正しかったことになる。今回、貴族探偵の秘書である鈴木(仲間由紀恵)がシンガポールから呼び戻されたことで、『貴族探偵=政宗是正』と思わせる展開となっていたが、十中八九ミスリードなのだろう。
これらの情報が明らかになった以外は、名前もわからないような俳優がお誕生日会とやらを繰り広げ、夜に連続殺人が起こるという「それちょっと前の回にもやらなかったけ?」と言いたくなるような展開。何が起こるのかがわからないままに、見慣れない俳優たちが延々とああだこうだ言っているのを40分近くも見守らなければならないのは、なかなかの苦行である。実際、途中で眠らないようにするのに苦労した。ようやくラスト近くになって殺人シーンだけが映し出され、現場を発見した愛香も何者かに殴られて気を失う。ラストは、貴族探偵が気絶した愛香を抱えて歩くカットで締めくくられた。
殺人までの展開がスカスカ
あっけに取られたとしか言いようがない。2回に分けて放送するとしても、引っ張りに引っ張って殺人が起こったところで1回目を終わるというのは、あまりにもドラマの常識から外れている。そこまでに至る話の密度が濃いならまだわからないでもないが、殺人が起こるまでの展開はほぼスカスカであった。どう見ても話を引き延ばしただけにしか思えない。
『貴族探偵』は5話と6話でも2話またぎの展開に挑んだが、1話で終わらせられる話を2話に延ばしたのがあからさまで、大失敗に終わった。せっかく終盤でドラマとしての安定を見せてきたのに、最終話直前で同じ過ちを繰り返すとは、まったくもって残念で仕方がない。最終回の予告映像では「師匠の死の真相 貴族探偵の正体の謎 全部見せます」とうたっているが、ここに来てそんなあおり文句も疑わしく思えてきた。広げた風呂敷を無理やりたたむような展開だけは勘弁願いたいが、果たして最終回では視聴者を感心させる展開を見せてくれるのだろうか。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)