マンガ&アニメを原作とした実写映画の流行は今に始まったわけではないが、その製作作品数が増えていくにつれて原作ファンの怒りや不満などがネットを席巻していく傾向もすっかりおなじみの風景となって久しい。
しかし、荒木飛呂彦の長寿人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』が実写映画化となると、さすがに他作品の比ではないというか、その出来栄えに対する不安(というよりも、そもそも映画化に反対する声明など)のコメントをSNS上で見ない日はないほど、ある意味での注目作として巷を賑わしており、また公開前にマスコミ試写を行わなかった宣伝展開も(スタッフ&キャストのインタビューを行う人には内覧試写があったと聞く)、強気の姿勢なのか逆なのか、いずれにしても興味は尽きない。
というわけで、8月5日、都内の某シネコンで見てきました、はい。公開2日目、土曜の午後の回にも関わらず、場内は1~2割程度の入りで正直アレ? とも思ったが、この日は各地で花火大会や夏祭りが開催されていたので、そちらにお客をとられたのか?
まあ、実際に観賞しての結論から先に言わせてもらうと、恐れていたほどひどくはなく、かといって過剰に期待するほどの傑作でもないといった、いわゆる五つ星で☆☆☆といった評価である。
今回は大河シリーズでもある原作の中で日本を舞台にした第4部『ダイヤモンドは砕けない』の映画化であるが、まずはこの判断が賢明で、数年前の『進撃の巨人』実写版2部作のように、多国籍キャラをすべて日本人が演じるご都合主義が回避できている(その意味では、すべてを日本人キャストでまかってしまった『鋼の錬金術師』実写版は大丈夫なのだろうか?)。
『ジョジョ』第4部といえば、主人公の高校生・東方仗助の巨大リーゼントをはじめとする数々のキャラの特異な扮装も挙げられるが、これも原作そっくりのコスプレを俳優たちに担わせ、また演じる側もきっと『ジョジョ』が好きな者たちなのだろう、皆が皆楽しそうに、それでいて自分たちが『ジョジョ』を演じるという責任感から醸し出されるなにがしかの緊張までもが好もしく伝わってくる。これは現在公開中の『銀魂』実写版の俳優陣とも共通した要素といってもいいだろう。
そして、これは良くも悪くもの要素だが、監督が三池崇史であること。TVやVシネマの苛酷な現場から、当時お高くとまっていた日本映画界を常に反逆的に見据えながら作品を連打し、いつしか業界の信頼を勝ち得てトップの座に君臨して久しい(それでいて巨匠の風格など微塵も示そうとしない)。そんな日本映画界の反逆児は、それゆえに漫画やアニメの映画化というかつては業界内部からも馬鹿にされがちだった企画に対しても真摯に取り組む術と意欲を身に着けている。
(余談だが、かつて人気漫画『ドーベルマン刑事』を原作にした同名実写映画が1977年に作られた際、監督の深作欣二は「映画が漫画より面白いということがあってはならない!」と豪語し、黒の革ジャンでマグナムをぶっ放す原作の主人公の設定を、なぜか沖縄から豚を連れて東京にやってきた見た目もみすぼらしいキャラに改変し、自分好みの作品に仕立てたが、当然原作ファンはがっかり、それどころか誰も見る気もしない、そんな作品になっていた。これが20世紀の漫画原作の映画化に対する映画業界人の基本姿勢であった)