カーリングは日本人の趣向に合っている
「シュートまでの“崩し”は完璧だったんですけどねぇ」
「決定機はつくっています。あとは決めるだけです」
サッカーのテレビ中継で、こんな解説者や実況の声をよく聞く。日本人は時に、ゴールを奪うこと以上に、「どのようにゴールを奪うか」という過程や戦術を重視する。結果よりも過程を重んじる傾向。それは、“氷上のチェス”と呼ばれるカーリングにぴったりだ。カーリングは、相手の出方を考えながら絶えず戦略を練り、エンドの最後に投げるラストショットまでに有利な状況に石を配置するスポーツ。さまざまな局面でどんなショット選択をするか、自分なりに予想しながら見るのは想像以上に楽しい。
また、日本の野球ではバントを決めた選手や四球を選んだ選手の仕事を評価し、打線のつながりを重んじるなど、日本人は“つなぐ”という美意識を楽しめる下地もある。カーリングは、4人が2投ずつ計8投を“つなぐ”スポーツだ。リードとセカンドがしっかりとお膳立てをし、サードが優劣に変化をつけ、最後のフォース(スキップ)が締めくくる。うまくショットがつながる爽快感も、誰かのミスショットを懸命にフォローしながら局面を打開していく我慢の展開も、日本人には楽しみやすいはずだ。
ほかにも、デリバリー(石を投げる)、スイープ(石の前を掃く)、ラインコール(ハウス側から指示を出す)といった役割を4人が協力して、ひとつのショットをつくり上げるという要素は、共同作業を重んじる日本の国民性にも合っている。
数ミリ単位で石のあたる角度を調節し、スイープのさじ加減ひとつで石の進路を微妙に変えるような細部にカーリングの勝負のアヤが存在しているのも、日本人には興味深いはずだ。陸上400メートルリレーで、バトンパスの精度を高めてメダルを獲得したり、スピードスケート女子団体パシュートが一糸乱れぬ隊列を整えて強豪を上回ったりした戦いぶりを称賛する人は十分楽しめるだろう。
このように、プレーする側からも見る側からも、カーリングが日本人の趣向に合ったスポーツであることがわかるのではないだろうか。