ディーン・フジオカ主演の連続テレビドラマ『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』(フジテレビ系)の第8話が7日に放送され、平均視聴率は前回より1.5ポイント増の7.4%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。本作は、『巌窟王』の名で知られる有名小説を下敷きにしており、平穏に暮らしていた日々を突然奪われた主人公・柴門暖(ディーン)がモンテ・クリスト・真海と名を改め、自分を陥れた者たちに復讐を果たすストーリーだ。
次週の第9話2時間スペシャルが最終回であることが発表されたため、第8話はそれに向けた大詰めとなったわけだが、結論から言うとほぼすべてを最終回に持ち越す微妙な回になってしまった。展開自体はおもしろかったのだが、暖を陥れた3人への復讐がまだ丸ごと残っており、「結局最終回ですべてを描くのなら今まで観てきた8話分の必要性はなんだったんだろう」という気持ちになってしまった。裏を返せば最終回は濃い内容になりそうなので、その分期待は高まる。
第8話では、主に入間家の人々が描かれた。警視庁の入間公平(高橋克典)はかつて、自分の身を守るために証拠を偽造し、父・貞吉(伊武雅刀)の身代わりとして暖を無実の罪で逮捕し、外国へ送った。真海はその復讐として、入間家をめちゃくちゃにすると同時に公平を社会的に抹殺しようとしていたのだが、命の恩人である守尾信一朗(高杉真宙)の交際相手が入間の娘・未蘭(岸井ゆきの)であることを知る。真海は、継母の瑛理奈(山口紗弥加)が未蘭を殺そうとしていることを貞吉から聞き出し、信一朗のために未蘭の命を救うことを決意した――という展開だった。
真海が未蘭を助ける展開になることはほとんどの視聴者が予想していた通りで、ストーリー自体に驚きはない。ただ、最終回を前にますます磨きがかかってきた役者たちの演技は楽しい。動くことも話すこともできない貞吉の前で、ウッキウキで鼻歌を歌いながら未蘭の殺害計画を話す瑛理奈役の山口は、怖いを通り越して笑えるほどの悪女ぶりだ。
意識ははっきりしているのに、どうすることもできずになりゆきを見守ることしかできない貞吉を演じる伊武の存在感もすごい。これまで、「体が動かないふりをしているだけで、いざとなったら起き上がるのでは」との予想もあったが、孫が殺されそうになってもただ黙って涙を流すだけだったところを見ると、どうやらその線はないらしい。だが、表情と視線の演技だけで、貞吉がいったい何を考えているのかが手に取るようにわかるし、今にも目をくわっと見開いて瑛理奈を一喝しそうな迫力がある。
貞吉は悪人だったわけではないが、暖が無実の罪で逮捕されたことの原因をつくった人物であり、真海の復讐対象に含まれていると考えてもおかしくない。だが、「すべてを知っているのに何もできない貞吉」と「貞吉の遺産目当てに貞吉本人と孫を殺そうとする瑛理奈」の対決をずっと見てきている視聴者は、どうしても貞吉がなんらかの方法で瑛理奈に反撃するのを期待してしまう。真海を応援しているはずなのに、真海の敵であるはずの貞吉も応援したくなるような、視聴者にモヤモヤ感を抱かせるこの構成は、個人的に嫌いではない。
さて、復讐すべき3人のうちのひとり、神楽清(新井浩文)は真海が手引きしたと思われる部下の裏切りで拉致され、牢獄のような部屋に閉じ込められたが、ほかの2人はますます真海にいきり立っている。自殺未遂から蘇生した南条幸男(大倉忠義)は「暖のところへ行く」と息巻き、真海と暖が同一人物だと確信した入間はもはや正体を隠さない悪辣ぶりを発揮して真海に襲い掛かる。入間は未蘭に毒を持ったのは真海だと誤解しており、その怒りのすさまじさは想像に難くない。少しは真海がピンチになったほうがドラマとしてはおもしろいので、最終回は盛り上がりそうだ。
果たして真海は、3人に復讐できるのか。かつての妻・すみれ(山本美月)や江田愛梨(桜井ユキ)との関係はどうなるのか。信一朗と未蘭は幸せになれるのか。最終回への期待が高まる。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)