早期の回復が実現した理由については、こう回顧する。
「とにかく一日一日良くなってさえいけば、目標とする時期に戻ってくることはできるだろうなと思っていました。日頃のチームのトレーナーの治療も大事だし、クラブを離れてから、自分が知っているところでの治療とか、自己管理も大事にしました。クラブのトレーナーが計画を立てて、『今日これができたら、明日これをやろう』『これくらい回復したら、これをやろう』というメニューがあって、それはだいたい8カ月で回復できる目安でつくられているものでした。僕はそれをちょっとずつ早めていく努力をしました。ジョキングなどは、手術後2カ月でできると言われたのに、1カ月で始めたんです」
治療院に通うルーティンに頼らない
前十字靱帯の治療を続けるなかで、不安も少なくなかったという。
「サッカー選手の一番大きな怪我は、やっぱりアキレス腱と前十字靱帯です。キャリアのなかで一番大きな怪我ですからね。前十字靱帯損傷の発生件数とか、いろんな人の経過を調べたりすると、再断裂や反対側の足の靱帯を断裂するケースも多かったんです。だから今でも、それは怖い部分として頭の中に残っています。逆足のケアはもちろん、再断裂には気をつけています」
齋藤選手は、治療院だけに頼らず、自分で治療できるように努力もしているという。
「何かあると治療院に頼るというルーティンは、自分の中で持ちたくないという気持ちがあります。今は28歳。日本でプレーしていますが、将来は海外でやりたいという希望が今もまだあるので、日本で3つも4つも良い治療院を知っていたから良いパフォーマンスができていたというふうにはしたくないんです。ルーティンができると、それを崩すというのも意識してケアをやっています」
このように、海外移籍を見据えたこだわりを明かす。
トレーニングや食事へのこだわり
怪我をすると、肉体だけではなく心にも影響が出る。齋藤選手は、自分なりにメンタルケアに取り組んでいるという。
「メンタルのことももちろん考えています。メンタルトレーニングにも行きますし、僕は本をよく読むほうなので、自己啓発ではないですが、どういうふうにしたらモチベーションが上がるか、あるいはどうしたら自発的な意識が出てくるかなどを調べたりします。本によって書いてあることは違うので、自分がどの考え方に向いているかをよく考えて、そこから得られる知識を活用しています」
現在の一日のトレーニングについても聞いた。
「朝10時からフロンターレの練習が始まります。9時くらいにはクラブに来て、アップをして体を温めます。チームでしっかり練習を積んだ後に、基本的には居残りで基礎練習というのも十分に行っています。全体の練習が終わった後に、それぞれの選手の特徴が出るんです。僕の場合は、基本的に治療とトレーニングをスケジュールに一個ずつ入れているという感じです。ジムで体の調整をしたり、体のキレを出す運動をしたりとか。それがメンタルトーニングに変わる日もあります」