劇場はすごい熱気
登場するのは高校生、演じるのは17歳から23歳。橋本環奈をはじめ、杉咲花、新田真剣佑、北村匠海、高杉真宙、黒島結菜、吉川愛、萩原利久、渕野右登、坂東龍汰、古川琴音、竹内愛紗と、若者に人気の俳優が揃っている。学園バイオレンスの『バトル・ロワイヤル』にしても、教師役でビートたけしが出演していたが、役者がすべて10代後半から20代前半というのも、この映画の特徴だろう。
中学生同士が殺し合いする『バトル・ロワイヤル』は、国会でも問題になりR-15指定にされ中学生は観られなくなった。だが逆に、その話題性が観客を呼び、01年度の邦画興行収入ランキングで第3位となっている。国際的にも高い評価を得た。
「それぞれが死にたい理由を語っていく。『十二人の死にたい子どもたち』はクローズド・サークルの典型的なおもしろさを発揮した作品です。生死を賭けた10代の若者たちの葛藤を描いたという点では、『バトル・ロワイヤル』と似たテイストを持っています。『十二人の死にたい子どもたち』がターゲットとしているのは10代後半から20代前半でしょうから、『バトル・ロワイアル』や、それに続く作品群はリアルタイムでは観ていない。そういう意味では新鮮さがあるのではないでしょうか」(B氏)
青少年への悪影響が懸念された『バトル・ロワイアル』に対して、『十二人の死にたい子どもたち』には厚生労働省がタイアップ。「『死にたい』その一言を他人(ひと)ごとにしない」というキャッチコピーとともに、同映画の宣伝と自殺防止の啓発を兼ねたポスターがつくられている。
「平日の夕方に観ましたけど、若者たちで席が埋まっていて、当たっている映画なんで、すごい熱気がありました。生きづらさを抱えた若者が共感して観ているというよりは、アトラクション的に盛り上がりたくて来ているという感じですね。だいたい3~4人で来て、声を上げながら見ていて、完全にエンターテインメントとして楽しんでいる感じです」(A氏)
「SNSを通じて自殺志願の若者が集まってくるという設定自体は、今の社会現象を扱っています。だけど、メンヘラは今ファッションにもなりつつあるし、自殺をナイーブに語るものとしては、エンタメに寄りすぎているという気がします。『そして誰もいなくなった』や『11人いる!』などと比べて、あまり緊張感がなくてコメディなのかなと思ったくらいです」(B氏)