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映画『十二人の死にたい子どもたち』じわりヒットの理由…『カメ止め』現象再来なるか?

文=深笛義也/ライター

カメラを止めるな!』との決定的な違い

 昨年の日本映画でスマッシュヒットとし話題を呼んだ映画として、『カメラを止めるな!』がある。『十二人の死にたい子どもたち』は、『カメラを止めるな!』や『スマホを落としただけなのに』を超えるヒットとなるだろうか。

「『スマホを落としただけなのに』は普遍的なテーマで楽しめるのに対して、『十二人の死にたい子どもたち』は完全に若者にターゲットを絞っているので、そこまでのヒットにはならないような気がします。中島美嘉のヒット曲をモチーフにした『雪の華』なども当たっていて、ライバルも多いので厳しいと思います。『カメラを止めるな!』のような、社会現象にまではならないでしょう」(A氏)

「『カメラを止めるな!』とではまるで違います。『十二人の死にたい子どもたち』はマーケティングの手法に則って、計算し尽くされたキャンペーンが展開されました。『カメラを止めるな!』は全然宣伝費もかけられずに、新宿K’s cinemaでの6日間限定公開から始まって、口コミでどんどん評判が広がって大手の配給会社が食いついて公開も広がっていきました。2回観ましたけど、3部構成で随時笑いもあってラストもちゃんとしています。『おもしろいから観たほうがいいよ』って、どの世代にも言えます。

 一方、『十二人の死にたい子どもたち』は、観ることは観たとしても、『絶対おもしろい映画だから観たほうがいいよ』と言いたくなるかというと疑問です。高校生とか学生はそうなるかもしれないけど、もうちょっと上の、映画をよく観に行く層にまで広がるかといったら疑問です。ミステリーが好きな人とか、キャストに魅力を感じる人たちにとっては、普通に楽しいと思うので『スマホを落としただけなのに』は超えるんじゃないですか」(B氏)

 12人というタイトルから、『十二人の怒れる男』とともに、そのオマージュとしてつくられた三谷幸喜作の『12人の優しい日本人』が思い起こされる。

「笑いのない三谷幸喜かなと、ちょっと思いました。役者の紡ぎ出す言葉が物語を進めていって、それがカチッカチッと、はまっていくような気持ちよさが共通しているんですよ。ミステリーだったら必ず起きることが、この映画では起きません。ネタバレになっちゃうので言えませんけど、“史上初の●●のないミステリー映画”ともいえるかもしれません」(A氏)

 舞台は廃病院のみ。派手なアクションもなければ恋愛もない。ストーリーと役者の演技そのものを楽しみたいという映画ファンが、若い層に増えているのかもしれない。
(文=深笛義也/ライター)

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