「金栗四三は、ストックホルムオリンピックで走っていて失踪してしまうわけです。ストックホルムでロケもしたという、その山場が3月に来るので、そこに向けて番宣を打ったり解説番組を設けたりして数字を上げるということを、総局長は発言しています。だけど難しいでしょう。事前の番宣がこれまでの大河のなかで1番多かったわけです。しかも朝ドラの奇跡と言われた『あまちゃん』と同じチームです、と思いっきり期待を煽った。期待値100%みたいなところで始まって、そしたら視聴者の3分の1が逃げた。
視聴者がある番組に1回失望して、再び戻ってくるということは、ほぼない。志ん生をビートたけしにやらせていますが、志ん生に思い入れのあるたけしが、その役をやるというのは話題性は抜群で、最初に視聴者を引っ張ってくることはできます。でも始まってみると、たけしは滑舌が悪くて何を言ってるかわからない。よくぞこんな演者を選んだなと思うような、ありえない人選でしょう。いくらビッグネームでも、語り部の言っていることがわからないのでは、視聴者はついていけません。
ドラマから逃げてしまった人たちが、解説番組を見るとは思えないですし、逃げてしまった5~6%の人たちを取り返せたとしても視聴率に換算するとせいぜい1~2%でしょう。まだ全然見てない85%くらいの人たちを開拓しなくてはいけないということですけど、そんなことができるかなあという感じです」
制作陣が抱えていた不安
じわじわと視聴率が上がった『あまちゃん』の現象再来は期待できないのだろうか。
「“じぇじぇじぇ”が流行りだして、有村架純の1980年代の“聖子ちゃんカット”が話題になって『あまちゃん』の視聴率は5~6月くらいからじわじわと上がり始めました。8月に3日連続で『あまちゃん』のダイジェストをやって、それを見ておもしろいと思った人たちが見始めて、最終週は23%を超えたんです。
訓覇圭プロデューサーに『視聴率を上げるために、そこまで計算してたんですか。すごいですね』って言ったんですけど、『いやあ、そんなこと全然考えてなかった。とにかくクドカンの脚本があまりにも突拍子もないもんだから、それを映像化することで精一杯で、なんの計算もしてない』ということでした。今回、『あまちゃん』と同じゴールデンチームで、『新しい大河をつくれよ』みたいな声が上司や外野からあって、相当強く意識していたと思うんです。初回の試写の時に、訓覇プロデューサーも井上剛監督も、『難しかったでしょうか?』『ダメですか?』などと記者たちに聞いていたということなので、不安があったんだと思います」