人気至上主義スタイルの限界
――メンバーを数字でしか評価しなくなると、人気のないメンバーは裏で支えようという心境にはなりにくいですね。
河西弁護士 そうですね。メンバー間に「売れれば偉い」「得票率が高ければ偉い」「1位と3位とでは1位のほうが偉い」という価値観が蔓延すると、どうしても自分の票数を増やすことだけに走りがちになります。ましてやまだ若い10代のメンバーにとって、大人たちの価値観をはねのけることは容易ではないでしょう。そうなると、メンバー同士は仲間からライバルになり、さらに敵になってしまい、ついには足を引っ張り合うようになってしまう。NGT騒動の背景にあるポイントは、こういった問題ではないかと思います。
――まるで、企業におけるフルコミッション制(完全歩合制)の営業部門のようです。
河西弁護士 モーニング娘。においてはメンバー同士が仲間ですが、NGT48は少なくとも今回の件に関していえば、敵同士になってしまったのではないか。ここから、ファンとの癒着も発生しているのでしょう。大量の投票券を持っているファンが、ギブ・アンド・テイクのように「あなたに投票するから連絡先を教えてよ」と要求すれば、お互いの利害が一致します。これはモーニング娘。には存在しない、アイドル本人とファンとの関係であり、モーニング娘。とAKBグループとの大きな違いではないかと思います。
――騒動の本質は、アイドルとファンが直接会えてしまう“接触商法”そのものにあるのではなく、より根幹にある過度な競争システムが、握手会などの接触商法によって暴走してしまったのだと。
河西弁護士 そうです。メンバー同士を競争させる商法がもう限界に達していて、それがNGTの暴行事件で表面化したのでしょう。ゆえに問題は、メンバーがファンに連絡先を教えてしまったことそのものにあるのではない。そのことももちろん問題でしょうが、その背景にあるのはメンバーを過度に競わせる運営体制であり、根本的な行き詰まりを感じさせます。人気至上主義スタイルの限界ではないかと思いますね。
――新潟という地方の小都市だからこそ起きた事件だという指摘もあります。
河西弁護士 それもあるでしょうね。先述したような根源的な問題もありますが、新潟という狭いエリアだからこそ、メンバーとアイドルが簡単に“繋がって”しまったという特殊性は、確かにあると思いますね。