松坂桃李が主演を務める連続テレビドラマ『パーフェクトワールド』(フジテレビ系)の第8話が11日に放送され、平均視聴率は前回と同じ6.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。
このドラマは、大学時代の事故で下半身が不随になった建築士の鮎川樹(松坂)と、高校時代の同級生・川奈つぐみ(山本美月)が繰り広げるラブストーリーだ。2人はいったん付き合ったものの、間もなく「別れたほうが相手のためになる」と互いに考えるようになり、未練を残しつつも別れてしまう。その後、川奈は幼なじみの是枝洋貴(瀬戸康史)と婚約。鮎川と川奈は完全に縁が切れたように見えたが、ある夫婦の家を建てる案件を共同で手掛けることになった――というのが前回までのあらすじだ。
第8話は、一言で言うと「鮎川と川奈が元の鞘に戻る寸前まで話が進んだ」という回。ラストで2人は互いに「言わなきゃならないことがある」と切り出し、先に口を開いた鮎川が「後悔がある」と言い出したところで幕切れとなった。結末だけ見れば、いい話にも思える。一部の視聴者からは「今度こそ壁を乗り越えて幸せになってほしい」「自分の幸せをあきらめない2人を応援したい」「めっちゃ感動した」など、2人がようやく元に戻る展開を歓迎する声が上がった。
だが、ただ単に「別れた2人がもう一度付き合いました」という話なら「良かった良かった」と手放しで喜んでいいのだろうが、この2人の場合は違う。川奈はすでに是枝と婚約しており、式場まで予約している段階だ。まさに結婚目前の段階にまで進んでおきながら、「やっぱり本当に好きなのは別の人でした」と手の平を返すような人間を果たして素直に応援できるだろうか。普通だったら、いくら身内や知人であっても、眉をひそめずにはいられないところだ。第8話で川奈がやったのは、そういうことなのだ。川奈は前回の第7話でも鮎川と是枝を振り回すような言動を繰り広げて視聴者のヘイトを集めたが、これで2週続けて人間性を疑わざるを得ない“最低な登場人物”になってしまった。
実際に、これを受けて「マジでずーっとイライラする」「あまりにも残酷すぎて、来週から見るのやめようと思う」「最初は健気でいい子だと思ってたのに、どんどん(川奈)つぐみのこと嫌いになってく」といった批判や不満の声を上げる視聴者も目立った。なかには、「(川奈)つぐみちゃんと(鮎川)樹目線で考えたら純愛なのかもしれないけど、ヒロ(=是枝)目線だと結構ひどいことしてるよね」と指摘する声もある。第9話の予告映像には、よりを戻した鮎川と川奈の周囲の人々が怒ったり泣いたりする様子が描かれていた。当然の結果と言うほかない。
自分たちが幸せになるために周りの人を不幸にしたのだから、鮎川と川奈が怒りや恨みを買うのは当然なのだが、そんな予告編映像にかぶせられたテロップは、こともあろうに「逆境に立ち向かう不変の愛」。逆境ではなく自業自得にすぎないし、一度は別れたくせして今さら「不変の愛」もないだろう。制作側がこのドラマを美しい純愛ストーリー路線にしたいのならそれでもいいが、それならそれで、もう少し川奈を悪者にしない方法だってあったのではないか。鮎川と別れた後に是枝と付き合うくらいはいいが、婚約して式場まで決めてしまうところまで進展させたのはやりすぎだったのではないか。ここまで周囲を巻き込んでみんなを不幸にしてから、最後にはみんなもわかって祝福してくれました、という大団円に向かうのは無理があるだろう。
第8話はこのほか、鮎川が巻き込まれた地震に関する描写があまりにも雑だったことも目立った。震度5で足場が倒れるほどの揺れだったにもかかわらず、特にそれ以外に被害もなく、それでいて避難所には大勢の被災者が寝泊まりしているという、よくわからない状況。鮎川は倒れてきた足場や材木にはさまれて身動きが取れなくなったが、駆けつけた川奈がちょっと持ち上げただけですぐに脱出。「あんなガリガリの川奈が持ち上げたくらいで出られるってどうよ」と、視聴者からのツッコミも相次いだ。しかも、何時間かぶりに救出された鮎川には明らかに外傷があったのに、病院に行くわけでもなく、その後は元気に振る舞う。あまりにも一貫してリアリティーに欠けており、ストーリーを進めるための材料として地震を使ってみた、程度の脚本家の軽薄な姿勢が透けて見える。
全体的にどんどんつまらないドラマになってきており、鮎川と川奈の行く末も、もはやどうでもよく思えてきた。唯一の癒やしは、川奈の妹・しおり(岡崎紗絵)と鮎川の職場の後輩・渡辺晴人(ジャニーズJr./SixTONES・松村北斗)のフレッシュな2人が繰り広げる恋人未満の軽妙なやり取りだけ。互いに無駄な気を遣わずに言いたいことをずけずけと言い合う自然な関係が見ていて心地よい。岡崎はかわいいうえに謎の色気を振りまくし、さわやかなイケメンの松村が見せるくったくのない笑顔も魅力的だ。むしろこの2人が繰り広げるストーリーを見てみたい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)