二階堂ふみとKAT-TUN・亀梨和也がダブル主演を務める連続テレビドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』(フジテレビ系)の第10話が13日に放送され、平均視聴率は前回と同じ6.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。
このドラマは、過去に竹内結子主演でドラマ化・映画化された『姫川玲子シリーズ』と呼ばれる誉田哲也著の小説を原作とした作品。第10話からは最終章と銘打ち、初映像化となるエピソード「ブルーマーダー」を放送する。
この「ブルーマーダー」は、池袋界隈で活動する裏社会の人間たちを次々に殺害する謎の殺人者を姫川玲子(二階堂)らが追うストーリー。殺害方法には特徴があり、なんらかの凶器を使って全身の骨を砕き、撲殺するというものだった。
というわけで、視聴者は2つの謎を抱いたままドラマの世界に引き込まれることになった。ひとつは、「ブルーマーダー」とはいったい誰なのか。そしてもうひとつは、血を流すことなく骨だけをバラバラにするような凶器とはいったいなんなのか。
ただ、ひとつめの謎については、ある意味、予告編映像でネタバレしていた。これまでのエピソードに登場していなかった要潤が映っており、どう見ても犯人にしか見えなかったからだ。実際に第10話では、アヴァンタイトル(導入部)の冒頭から要潤が出演。「要潤(正確には要潤が演じる何者か)がブルーマーダーに違いない」と視聴者の誰もが思ったはずだ。そして、その通りの展開となった。
要潤演じる元警察官・木野一政は警察を中途退職した後、元上司に依頼されて暴力団に潜入し、スパイとして活動していた。だが、後に何者かの密告によって素性がバレて暴行を受けるが、自力で逃走して行方不明となっていたのだ。木野がブルーマーダーであるという事実は、結構あっさりと警察の知るところとなり、逃走するが追い詰められていく――というところで第10話は終了。原作に準拠してはいるのだが、なんのひねりもなくどんどん話が進んでいくなあという印象だ。
骨を砕く謎の凶器についても、それが具体的に何かまでは明かされなかったものの、棒状の短い何かであることは映像からわかるようになっていたため、最終回に持ち越すほどの謎でもなくなってしまった。つまり、このエピソードで提起された2つの謎はどちらも前編でそれなりに答えが明かされてしまったというわけだ。ドラマにおいて原作の話をするのは野暮だが、次週の最終回が原作通りだとすれば、このエピソードには特にどんでん返し的な要素もなく、これ以上特別な進展もない。そうであれば、最終回に持ち越すよりも拡大版で今回一気に最後までやってしまったほうが良かったのでは、と思えて仕方がない。
ツッコミどころも少なくなかった。急に街なかで話しかけてきた外国人の女がブルーマーダーの存在を警察に教えてくれるという都合の良さもそのひとつ。さらに、「マーダー(殺人)」や「マーダラー(殺人者)」という英単語がそれほど日本に定着しているとは思えないのに、青い仮面の殺人者をみんなが「ブルーマーダー」と呼んでいるとの設定も不自然極まりない。ブルーマーダーと至近距離で対峙した刑事が、明らかに自分のほうが有利なのに彼の求めに応じて素直に銃を床に置いてしまい、案の定やられてしまう展開もバカバカしい。
さらに、ブルーマーダーが殺した相手の骨を砕く理由について「骨さえなければ死体の処理が楽だから」と姫川は推測するが、骨を砕いたから楽になるってもんでもないだろう。運びやすくはなるかもしれないが、どうもしっくりこない。内容的には原作に準拠しているため、どちらかというと脚本より原作の問題なのだが、ネット上を見ると原作に対してツッコミを入れている読者は少ないようだ。ドラマ化に伴っていろいろな部分を省略したことで、相対的におかしな場面や設定が目立ってしまったのかもしれない。
最大の疑問は、劇中で姫川班を解体して刑事たちを所轄に左遷したことや、菊田和男(亀梨)を女性警察官と結婚させたことにストーリー上の意味が本当にあったのかという点。姫川は本庁の捜査一課から所轄に飛ばされるが、だからといって本庁と所轄との壁にぶち当たることもなく、所轄だからこそ成長できた何かがあるわけでもない。何かといえば本庁の姫川班時代の仲間たちと飲んでおり、舞台をがらりと変えたことに作劇上の必然性が感じられないのだ。これも原作通りではあるのだが、どうせもう最終回を残すだけなのだから、原作を改変して姫川班が存続するドラマオリジナル展開を繰り広げる手もあったのではないかと思える。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)