女優が熱戦!観るべき秋連ドラ3本を厳選&解剖 アラフォー女性の本音、エンタメ全開…
永作の夫・藤木直人は、妻と愛人にまさかそんなことが起きているとは夢にも思わない。だから、いつものように石田のマンションを訪れ、彼女を抱く。自分の親友である石田だと思って行為に及ぶ藤木に、永作はどんな思いで応えていたのか。とても残酷で、同時にとてもエロチックな場面だ。見る側(視聴者)は真相を知っているが、当事者(登場人物)はそれを知らないという構図は、物語作りの手法のひとつである。
2人の心が入れ替わる直前、永作に浮気を追及され、反撃する石田が口にしたセリフがすごい。「してないんだってね、何年も。子供が生まれてからか。(わずかに笑って)私とはしてるよ、会うたびにね、楽しくセックスしてる」
脚本の岡田惠和は、専業主婦である永作と独身の映画プロデューサー・石田を対比させながら、アラフォー女性の建前と本音をじわじわとあぶり出していく。女性はもちろん、男性視聴者もまた目が離せないはずだ。
●『きょうは会社休みます。』(日本テレビ系/主演:綾瀬はるか)
綾瀬には『ICHI』『ひみつのアッコちゃん』『万能鑑定士Q ~モナ・リザの瞳』など、いくつもの主演映画がある。しかし、その魅力を一番引き出していたのは『プリンセス トヨトミ』だろう。綾瀬は会計検査院の上司、堤真一をサポートする調査員役だ。生真面目で独特のカンの良さを持つ一方、超マイペースで、どこかヌケていて愛嬌がある。脇役にもかかわらず、この作品のテイストを左右する存在感があった。
綾瀬にとって同ドラマは、テレビドラマの代表作になるかもしれない1本だ。ヒロインの青石花笑(綾瀬)は物産会社の地味なOL。30歳になるが、いわゆる男性経験はゼロである。
そんなアラサー女性が9歳年下のバイト青年(福士蒼汰)と一夜を共にしてしまう。恋愛に不慣れで自分の気持ちに対応できず、小さなことで一喜一憂する綾瀬。しかも同じビルにある会社のイケメン経営者(玉木宏)まで接近してくるではないか。
美人でいながら、ちょっと天然のとぼけた感じを醸し出せるのが綾瀬だ。その魅力と今回の役柄がうまくマッチしており、世間知らずと不器用さと妄想癖にもほどがあるヒロインに、つい共感してしまう。綾瀬はるかの“空気投げ”的演技がさえる、異色の恋愛ドラマだ。
(文=碓井広義/上智大学教授)