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ぼくらはあの頃、アツかった(16) 幸運の女神が垂らす蜘蛛の糸。投資ゼロでのマクリ勝ちと木の実ナナの思い出。

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 面長。色白。ややソバージュがかかったショート。薄いファンデーションの奥に、僅かなそばかす。猫のような目の女だった。バトルボーナス7連目か8連目。たしかその辺だったと思う。

「お兄さん、こっち打つ?」

 自分を見ながらはっきりと声を掛けられた癖に、それが自分に向けられた言葉で、どういう意味を持つのかが理解できなかった。やがてもう一度同じ言葉が耳を抜け、脳に浸透した所で、ようやく分かった。大当たりの譲渡。ほとんどのホールでは禁止行為であるが、同時にそれは一発逆転、ノーリスクの大勝利チャンスでもあった。血の気が引くような、不思議な喜びだった。助かった──と思った。蜘蛛の糸にすがりつくカンダタの気分だ。

「いいんですか?」
「うん。これから仕事だから」
「仕事? もう──」

 夕方ですよ、と言おうとしたところで、女が水商売であることが理解できた。衣装が完全にそっちのチームだ。筆者は吸いざしのタバコをもみ消し、それからちょっと考えてこう言った。

「じゃあ、お店行きますよ。ラオウ昇天させてから」
「あはは。分かった。期待してる。私のお店はね──」

 言われた店名を脳内の「大事なモノいれ」に仕舞って女と別れた。名前も聞かなかった。別詰みの箱と下皿のメダルは別として、律儀にもクレジットを落とさずに消えていった女。まるで幸運の女神フォルトゥナだ。あるいは聖母マリアでもいい。もしくはアマテラス。何にせよ善性を帯びた聖なるなにかだ。心の中で深く感謝しながら打ったら、ホントにラオウが昇天した。脅威のマクリ勝ち。自分の運や立ち回りを完全に除外した、投げ与えられた施しの勝利である。これは嬉しかった。

 その日は友人と約束があったので、居酒屋に言ってそのまま家に帰った。布団に入ってもまだ不思議な気分だった。女神。あの女神は一体なんだったのだ。もう一度あの女神に会いたい。

 翌日、学校が終わってから「大事なモノいれ」に入っている記憶を頼りに店に向かった。キャバクラか、あるいはもっと大回転とかある系の店を想像していたら、クラブみたいな店だった。緊張しながら入店すると、木の実ナナみたいなオバちゃんがいた。

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