ワールドカップのMVP受賞者で、Jリーグでプレーした選手は、以前に2名いる。スキラッチ(元・ジュビロ磐田<1994-97年>)とストイチコフ(元・柏レイソル<98-99年>)がそうだが、それ以来14年ぶりの大物といえる。5月18日現在までに6ゴールを記録するなど、ワールドカップイヤーに日本のピッチ上で躍動するMVP男の“本気度”は、観客動員数の増加という目に見えたかたちで日本サッカー界に還元されている(当サイト記事『セレッソ大阪ファンの“セレ女”、なぜ急増?きめ細かいファン対応、試合の観客動員数で大幅増』参照)。
では、試合でのパフォーマンス、観客動員数以外の観点からフォルランがもたらしたものは何か。さまざまな側面から検証を重ねてみたい。
●ウルグアイから来日するサポーターも
サポーター同士が一体となるような、欧州では体感し難い熱狂的な応援スタイルで、生活拠点を日本に置く外国人たちに支持されている浦和レッドダイヤモンズなど一部の例外を除けば、Jリーグの世界的な知名度は決して高いとはいえない。国際サッカー歴史統計連盟が発表した、14年の世界リーグランキングでは、Jリーグは30位と、23位の韓国Kリーグの後塵を拝している。
日本人が欧州のトップリーグを観戦するために渡航することはあっても、自国のサッカー文化が確立した国の人々がJリーグを観戦に日本を訪れるというケースは、極めて珍しいといえるだろう。
だが、今季のセレッソ大阪の試合では「スタジアムで外国人を見る機会が増えている」というサポーターたちの証言をたびたび耳にしていた。
4月某日、大阪市此花区舞洲の練習場で、黄色、白、青で彩られた国旗を身にまとった、年齢、性別も異なるウルグアイからの10人を超えるサポーターの姿を目にした。熱狂的なサッカーファンであるタバレスさん(30代)は「父のパブロもワールドカップに3度出場している。そして、ディエゴはウルグアイ史上初めてワールドカップでMVPとなった。まさにウルグアイの英雄といえます。ウルグアイ人にとっては、(アルゼンチンの英雄)ディエゴ・マラドーナのような存在。欧州でプレーしていた今までは、練習場で接触することが困難でしたが、日本ではディエゴと接するチャンスがあると聞いた。だから、ワールドカップ開催前にディエゴを激励に来たんだ」
「セレッソ大阪やJリーグについて知っていたか?」という問いに対しては「ノー。だけど今は知ることができた、という事実が大切だろ? ウルグアイでもセレッソ大阪の名前は、フォルランの所属クラブとして浸透していくと思うよ」と答えてくれた。
練習終了後、はるばるウルグアイから訪れたサポーターと一緒に、30分以上にわたり写真撮影や会話を楽しむフォルランの姿を確認することができた。